2009年11月28日土曜日

clopidogrelの2C19問題:AHAの抄録から(加筆訂正版)

(11月28日付の記事の加筆訂正版です。誤字や括弧の閉め忘れが目立つので直し、メタアナリシスに関するコメントを斜字で加筆して、以前書いたCHARISMA試験のデータが参考になるので再掲しました。)

今年のAHAでもclopidogrelとプロトンポンプ阻害剤(PPI)の相互作用、そしてCYP 2C19機能低下多型との関連性に関する研究結果がたくさん発表されたようです。幾つか興味深いものを紹介しましょう。

その前に、これまでの論点をまとめて起きます。抗血小板薬clopidogrelは経皮的冠介入術(PCI)を受けた患者や脳梗塞経験者などが再発を予防するために大変重要な薬です。特にPCI患者にとっては、アスピリンとclopidogrelを併用して強力に血小板凝集を阻害する、dual anti-platelet therapy(DAT)は欠かせません。PCI後の再狭窄を防ぐために薬物溶出ステント(DES)を留置するケースが増えていますが、ステント血栓のリスクが一年以上続きますので、支障がなければDATを一年以上続けよというのが米国のガイドラインの推奨です。

貴重な薬なのですが、二つの弱点があります。第一に、服用後に体内で数段階の代謝を経てから初めて活性を発揮するプロドラッグなので、効き始めが遅く、また、肝臓酵素の機能具合や薬物相互作用に影響されることです。関与する酵素が多いことや多段階であるため発売当初は仕組みが良く分からなかったのですが、近年になって2C19酵素が特に重要であることが判明しました。問題は二種類あり、第一に、2C19酵素の機能低下多型(2C19*2型が多い)のキャリアはclopidogrelの活性化が中々進まず、血小板凝集抑制作用を通じた心筋梗塞リスク削減効果を十分に享受できない可能性があります。遺伝子は二組あるので片方だけなら何とかなるものですが、clopidogrelの場合は両方の場合(ホモ接合型)だけでなく片方(ヘテロ接合型)でも影響があるようです。ヘテロ接合型を持つ人はホモ接合型よりはるかに多いので重要です。

第二は2C19を阻害する薬との相互作用です。clopidogrelのもう一つの弱点である胃腸出血リスクはアスピリンにもありますからDATはリスクがダブルで高まります。そこで、胃酸の分泌を抑制する薬を併用して予防することがしばしばあるのですが、最も効果の高いPPIは2C19を阻害するので、clopidogrelの活性化を邪魔するかもしれません。これも発売当初は良く分からなかったのですが、様々なエビデンスが積み重なったため疑惑が高まっています。

私の形勢判断は、2C19機能低下多型は大いに疑わしい。薬物相互作用試験、血小板凝集試験、疫学的試験、前向き無作為化対照試験の全てで、懸念が浮上しています。但し、否定的なエビデンスもありますし、影響するのはホモ接合型の時だけ、というデータもあります。無作為化対照試験のエビデンスといっても、サブポピュレーション分析なので各群の該当患者の患者背景(年齢など)に偏りがないとは限らず、完全なエビデンスではありません。

この問題に答えが出るとしたら、アストラゼネカが開発した新薬であるticagrelorの第三相試験、PLATOのゲノムサブスタディでしょう。PLATO試験はticagrelor の心筋梗塞再発リスク削減効果がclopidogrelより高いことを明らかにしました。ticagrelor は2C19の影響を受けないはずですので、2C19機能低下変異のある患者ではもっと大きな差が出るでしょう。過去の研究と比べて症例数が多く検出力が高いので、どのような結果になったとしても、説得力が高いでしょう。

PPIはよく分かりません。薬物相互作用試験や血小板凝集試験では影響が見られますが、このような試験では心筋梗塞削減効果がどの程度低下するかということまでは知ることはできません。疫学的試験では心筋梗塞リスクが高いという結論が出ていますが、PPIを服用している人としていない人では患者背景が違います。疫学的試験では患者背景の違いを修正した上でリスク倍率を推定していますが、修正方法が正しいとは限りません。

前向き無作為化試験ではticagrelorの第三相試験でも、第一三共が開発したprasugrelの第三相試験でも、これらの薬のclopidogrel対比のリスク削減効果はPPIを服用していてもいなくても同程度でした。もっと明確はエビデンスはclopidogrelとomeprazoleの合剤の第三相試験COGENTで、心血管イベントのリスクはclopidogrelだけを投与した群と殆ど同じでした。この試験は開発会社の資金繰りが行き詰まり途中で打ち切りになってしまったのですが、試験のデザインがしっかりしていて、心血管イベント数が当初の計画よりは少ないにしてもかなり多いので、信頼性は高そうです。

clopidogrelの効果が高いといっても、臨床試験期間中に心筋梗塞を再発するのは偽薬群でも一部の患者だけなのですから、恩恵を受けるのは更にその一部の患者だけであり、2C19影響で恩恵を受けられないのは更にその一部に過ぎません。。clopidogrelノンレスポンダー問題が中々解決しない理由は、問題提起する人は沢山いるのですが、多額の資金を投じて確認試験を実施してくれる人が殆どいないからです。その意味で、clopidogrelを倒して天下を取ろうとする新薬が二種類も登場したことはラッキーです。アストラゼネカや第一三共がこの問題を探求する上で重要な役割を果たすでしょう。


前置きが長くなりました。AHAの抄録から、最初に夫々の問題のメタアナリシス、そして2C19多型問題とPPI問題を統合的に分析した研究、日本で実施された2C19多型及びrabeprazoleの影響を調べた血小板凝集試験、そして最後に、詳しいことは良く分からないのですが、機能増強多型の存在を示唆する研究を紹介します。




2C19機能喪失多型の影響に関するメタアナリシス

著者:J. Mega(Brigham and Women's Hospital)等

デザイン:2C19機能低下多型(殆どが*2型)と臨床的な転帰の関連性を調べた9本の試験のメタアナリシス(random-effects model)。被験者の91%はPCIを受け、65%は急性冠症候群症例。MACE(主要有害心血管イベント)解析対象は9684人、ステント血栓解析対象は5772人。

結果:9684人のうち機能低下多型キャリアは28.5%で、ヘテロ(片方だけ)が26.3%、ホモ(両方)は2.2%だった。MACEの相対リスクは1.61で統計的に有意だった(次表)。ヘテロもホモもリスクが高かった。ステント血栓の相対リスクは2.76でこれも有意に高かった。

結論:2C19機能低下多型キャリアは有害心血管イベントやステント血栓のリスクがヘテロ・ホモを問わず高かった。遺伝子検査をすればclopidogrelの恩恵を受けにくい、30%近い患者を特定することができる。


相対リスク95%信頼区間p値
MACE:
キャリア対ノンキャリア1.611.28-2.02<0.001
ヘテロ対野性1.501.08-2.080.016
ホモ対野生1.811.21-2.710.004
ステント血栓:
キャリア対ノンキャリア2.761.77-4.30<0.001
ヘテロ対野性2.511.59-3.98<0.001
ホモ対野生4.782.01-11.39<0.001


これだけ研究の数が増えると一々取り上げるのは大変なので、メタアナリシスがあると助かります。それにしても1.6倍ですか。CURE試験ではclopidogrel併用群の心血管イベント相対リスクは偽薬群の0.8倍でしたので、clopidogrel群から偽薬群を見ると1.25倍となります。CREDO試験では、同様に、1.36倍でした。clopidogrelは急性冠症候群では純粋な偽薬対照試験が殆ど実施されていないので、実際はもっと効果が高いのかもしれませんが、それにしても1.6倍というのは大きすぎる印象です。


尤も、CURE試験でもCREDO試験でも、2C19機能喪失多型を持たない人だけが対象だったらもっと良い結果が出ていたかもしれません。この問題は堂々巡りです。

疫学的試験の弱点は、2C19機能喪失多型を持つこと自体が心血管リスクを高める可能性を考慮していないことです。本来なら、clopidogrelを服用していない人の研究を行って、2C19機能喪失多型自体がリスク因子なのか、もしそうだとしたらリスク倍率はどの程度なのか、検証しなければなりません。

その意味で面白いのは、以前取り上げた、CHARISMA試験のゲノムサブスタディです。偽薬群(アスピリンのみ)のデータを見ると、*2/*2型は8.8%とWT(野生)/WT型の5.1%より高くなっています。残念なことにイベント数が少ないので説得力は今一つですし、リスクが本当に高いとしても現時点では理由が明らかではないので、生物学的もっともらしさに欠けています。




CHARISMA試験のゲノムサブスタディ

D. Bhatta(Brigham and Women's Hospital)等。2009年のTCTで発表

デザイン:CHARISMAは冠動脈疾患などを持つ患者を対象とした心血管イベント初発・再発予防試験で、15603人をDATとアスピリンだけの群に無作為化割付し、メジアン28ヶ月間追跡。数値上はDATのほうが若干良かったが有意差は出ず。ゲノムサブスタディは4862人を対象に2C19酵素の遺伝子を調べ、各ハプロタイプの心血管死・心筋梗塞・脳卒中リスクを野生(WT)遺伝子だけしか持っていない人と比較。



CHARISMA試験全体の成績
主評価イベントの相対リスクN相対リスク95%CI
治験全体15,6030.930.83-1.05
うち、再発予防グループ12,1530.880.77-0.998
初発予防グループ3,2841.20.91-1.59


ハプロタイプ毎の主評価項目発生率
偽薬群n/Nclopidogreln/N
全ユニバース:

7.30%573/78016.80%534/7802
ゲノムサブスタディ:
WT/WT5.10%49/9716.00%57/950
*2/WT4.30%21/4896.70%33/490
*2/*28.80%5/5713.80%8/58
*2/*176.30%10/1597.70%13/170
*17/WT7.50%48/6425.80%37/643
注:主評価イベントは心筋梗塞、脳卒中、心血管死。再発予防グループは冠動脈疾患、心血管疾患、末梢動脈疾患の既往歴あり。





PPI相互作用に関するメタアナリシス

M Singh(Rosalind Franklin Univ of Med and Science)等

デザイン:clopidogrelとPPIの関連性を調べた5本の試験のメタアナリシス(Mantel-Haenszel fixed-effect model、n=29749)。主評価項目はMACE(急性心筋梗塞、再血行再建術、心臓死)。

結果:PPI服用者と非服用者の患者背景には顕著な差はなかった。服用者は非服用者と比べてMACEリスクが有意に高かった(オドレシオ1.65、95%CI:1.55-1.76、p=0.000)。

結論:PPIとclopidogrelを同時使用するとMACEリスクが顕著に高まる。


こちらも1.65倍で2C19多型と同じくらいのマグニチュードを持つリスク因子ということになります。



2C19機能低下多型及びPPI相互作用のメタアナリシス

Jean-sebastien Hulot(UPMC、フランス)等

デザイン:clopidogrelと2C19*2多型の関係を検討した8本9427人の試験とPPIとの関係を検討した8本35108人の試験のメタアナリシス(fixed-effect model)。虚血性イベント(死、再発性心筋梗塞、緊急血行再建術)の発生例を抽出した。

結果:2C19*2多型キャリア(n=2674、28%)は虚血性イベントの発生率がノンキャリアより高かった(10.4%対8.3%、オドレシオ1.31、95%CI:1.12-1.53、p<0.001)。心血管死の増加にも関連していた(各1.8%対1.0%、1.79、1.10-2.91、p<0.019。PPIユーザー(n=15197、43%)は非ユーザーより虚血性イベントのリスクが高かった(25.5%対19.4%、1.48、1.40-1.57、p<0.001)。全データを統合すると、機能低下多型や薬物相互作用によって2C19機能が改変されているclopidogrel服用者は虚血性イベントが50%高い(オドレシオ1.49、95%CI:1.42-1.57、p<0.001)。



こちらのメタアナリシスでは1.3倍と1.5倍で、同じメタアナリシスでも少し違った結果になっています。



2C19機能低下多型とPPI相互作用に関するレジストリーデータ分析

J. Carlquist(Univ of Utah)等

デザイン:IHCS症例登録に組入れられた、DES留置術を受けて退院時にclopidogrelを服用していた患者938人(*2型キャリアは27.1%)のデータを用いて、2C19*2多型やPPI服用の有無と一年間の心筋梗塞・死亡リスクとの関連性を研究。

結果:PPI服用者は2C19*2ノンキャリアでもキャリアでもリスクが高かった。Cox回帰分析ではPPI服用のハザードレシオは2.37で有意、2C19*2キャリアは1.35で有意ではなかった。この二つの要素の間の相互作用は統計学的に有意ではなかった(交互作用p=0.57)。

結論:PPI服用に関連するリスクのマグニチュードは2C19*2キャリアのそれを上回る。PPIのリスクはキャリア、ノンキャリアを問わないので、遺伝子検査するだけでは回避出来ない。この研究は、選択バイアスやPPI自体の直接的な毒性の可能性を除外できていないなどの限界があり、無作為化臨床試験で因果関係の有無を明らかにすべきである。それまでは、DES留置術を受けた患者にclopidogrelとPPIをルーチンに投与することは思いとどまったほうがよい。


1年心筋梗塞・死亡率PPI服用非服用p値
ノンキャリア14.4%5.8%<0.001
キャリア17.6%9.3%0.05
Cox回帰分析によるハザードレシオHR95%CIp値
PPI服用2.371.56-3.61<0.001
2C19*2キャリア1.350.90-2.030.15




この試験で印象的なのは、2C19が機能しているノンキャリアのほうがPPI服用の影響が大きく、PPI服用者のほうがキャリア対ノンキャリアの倍率が小さいという、理屈通りのデータになっていることです。



rabeprazoleとclopidogrelの相互作用

S. Hokimoto(Kumamoto Univ)等

デザイン:冠動脈疾患の127人を対象に、2C19多型やrabeprazoleがclopidogrelの血小板凝集阻害作用にどう影響するかを検討。


結果:extensive metabolizer(2C19*1/*1)が46例、hetero extensive metabolizer(*1/*2、*1/*3)が52例、poor metabolizer(*2/*2、*2/*3、*3/*3)が29例を占めた。血小板凝集活性はこの順に高かった。rabeprazoleを服用(29例)しても服用しなくても(98例)血小板凝集活性に有意な差はなかった。


この抄録は被験者の組入れ条件や統計的な有意性に言及していないこと、rabeprazole投与例が少ないことなど、よく分からないことが多いのですが、興味深いのは2C19機能喪失多型キャリアが欧米の試験と比べてはるかに多いことです。この問題が日本人(と中国人)にとって特に重要であることを示しています。同時に、これだけキャリアが多いのなら日本のほうが研究しやすいかもしれません。

clopidogrelは中国で実施されたST上昇型心筋梗塞のCOMMIT試験で、平均2週間の死・心筋梗塞・脳卒中イベントを偽薬比9%減らすことに成功しました。他の試験と比べると効果が小さいですが、負荷用量を投与しなかったことや期間が短いことが響いたのかもしれません。同時に、今日の視点から見ると、中国人に2C19機能喪失多型が多いことが響いたのかもしれません。



clopidogrelの効果を増強する2C19多型

K. Tiroch(Deutsches Herzzentrum、ドイツ)等

デザイン:急性心筋梗塞の925人を対象に、clopidogrel服用者の2C19*17(C/T)Tアレルと心血管イベントの関連性を検討。

結果:Tアレルのキャリアはノンキャリアと比べてMACE(心血管死、心筋梗塞、ステント血栓確定例、標的血管血行再建術)が18%少なかった(33.6%対40.9%、p=0.047)。

結論:この試験は、機能増強的2C19*17 Tアレルがclopidogrel服用者の心血管イベントを顕著に低下させることを初めて明らかにした。



大変面白い抄録なのですが、ここでいうTアレルがホモ接合だけなのか、ヘテロも含んでいるのか、該当症例数がどの程度あったのかなどが分かりません。ノルウェイのI. Rudberg等(Clin Pharmacol Ther. 2008 Feb;83(2):322-7)がescitalopramという抗鬱剤の服用者を対象に実施した試験では、166人中*17/*17が7人(4%)、ヘテロが59人(35%)でした。結構いるようですが、地域によってかなり異なるようです。因みに日本は少ないようで、、K. Sugimoto等(Br J Clin Pharmacol. 2008 March; 65(3): 437?439.)が弘前大学大学院医学研究科の学生を対象に実施した試験によれば、2C19*17ヘテロ接合型は265人中7人(3%)、ホモはゼロ。*2または*3だけを持っていた人は48人(19%)、*2または*3と*1のヘテロは116人(44%)、*2または*3と*17のヘテロは4人でした。


今日では日本の製薬会社ですら海外での開発を先行させています。日本は海外の大規模な試験のデータと日本の小規模なデータを使って承認申請する戦略です。このような時代だからこそ、人種によって異なる機能喪失多型の影響について、よく調べておく必要があるでしょう。


2009年11月23日月曜日

AHAでの日本の研究発表に関する苦言

AHAのウェブカストで日本のアウトカム試験の発表を見て、これではイカンのではないかと思いました。私如きが僭越ですが、欧米の学会でも大きな関心が寄せられている問題なので、書かせてください。


Lancet誌に刊行された日本のdual RAS blockadeに関する先駆的な臨床試験が、実は倫理基準を遵守せずに実施され、実施方法や解析方法にも疑わしい点があったというのは大変な驚きでした。科学研究は先人の積み重ねた石の上に更に積み重ねる作業ですから、土台の石に欠陥があり崩れると多くの研究者が迷惑します。医学の場合、適切ではない医療に多くの患者が曝されることになりかねないので、被害が社会全体に及びます。それだけに、治験を厳格に行ってその経緯や結果を率直に発表し、読者や学会出席者に研究の長所と限界を明示することが重要です。


研究者の側にも言いたい事はあるかもしれません。スーパーコンビューター研究費の事業仕分けが典型的ですが、科学研究にも分かり易い短期的な成果が求められるようになり、何か成果を挙げないと研究費が削られて一層成果を挙げにくくなる悪循環に陥ってしまいます。このような時代だけに私たちも研究発表を注意深く吟味することが必要です。


さて、このアウトカム試験は心不全治療におけるベータブロッカーの至適用量を探索した研究者主導試験です。1500例を組入れる予定でしたが進捗せず、結局、360例程度で解析に入りました。研究には試行錯誤が付き物で、日本のアウトカム試験の歴史はまだ始まったばかりなのですから、失敗経験も貴重です。重要なのは、この経験を多くの研究者に伝えて、次の研究に生かすことでしょう。


ところが、AHAの発表では治験の経緯や解析計画が言及されなかったのです。おそらく、聴衆はこの試験の動機を全く理解できなかったでしょう。


この試験の背景になった問題意識は、日本人における至適用量が明確ではないことだそうです。このベータブロッカーは西洋では一日50-100mgが推奨されていますが、日本では5-20mgと大きな違いがあるからです。話の流れからは、50mg以上の高用量と低用量を比較したのだろうと思ったら、そうではありませんでした。一日2.5mg、5mg、20mgの三種類しか設定されず、むしろ、低用量の有効性を探った試験です。


解析計画は言及されませんでした。組入れが進まなかったことやイベント発生率が予定より低く推移したために途中で目標症例数を引き下げ、それに伴い解析計画が変更されたことも、その症例数にも到達しなかったため繰上げ完了されたことも言及されませんでした。主評価項目が見直されBNP値が大きく変動した場合も評価対象に含まれるようになったと聞いていますが、学会では主評価項目の具体的な構成が明示されなかったので、真偽は分かりません。複合評価項目は死亡のような深刻なイベントと代理マーカー変動のような比較的軽いイベントを同じように扱うので、明細を確認することが重要ですが、定義が分からないのでは話になりません。


解析結果は5mg群は2.5mg群と比べてハザードレシオが0.86でしたが、95%信頼区間で見ても、ログランク・テストのp値で見ても、有意ではありませんでした。10mg群と2.5mg群の比較でも同じです。このため、発表者は、2.5mgという低用量でも、LVEFが低下した軽中度慢性心不全の日本人患者の長期的な転帰に恩恵的な効果を示したと結論しています。


しかし、有意な差が無かったということは同等であることと同じではありません。本当は差があるのに治験が失敗して検出できなかった可能性が残っているからです。ディスカッサントが指摘したように、臨床的に意味がある差を検出するためには数千人の症例が必要です。治験の経緯を知らない人は、そもそもなぜ、このようなアンダーパワーの試験を計画したのか、訝しく思ったことでしょう。


近年、米国の学会では臨床研究の発表の仕方に関する批判が増えています。製薬会社などが成功した試験の結果だけを大々的に発表するパブリケーション・バイアス、データ隠しの問題は、主要医学誌が声明を出して、治験プロトコルの事前登録を訴える事態になりました。PROACTIVE試験(pioglitazoneのアウトカム試験)では主要な二次的評価項目とされたものが、ポストホックで追加されたのではないかという疑惑が浮上しました(実際にはギリギリセーフなタイミングだったようです)。仮説検証的試験は仮説が重要なのに結果を見てから主評価項目や追跡期間を変更したり、主評価項目で有意差が出なかったのに二次的評価項目の一つだけで有意差が出たことを喧伝したりと、ご都合主義的な発表が横行している現状を、憂慮しているのです。このような環境では発表者に悪意がなくても不必要な疑惑を招いてしまいます。


この試験の関係者の皆様にとっては不愉快かもしれませんが、私たち全員にとって重要な問題なので、敢えて書かせていただきました。



2009年11月21日土曜日

米国がclopidogrelの警告を強化:日本はどうする?

Plavix(clopidogrel)の米国のレーベルが変更され、2C19問題がセットで警告されました。話自体は前からありますが、注意事項ではなく警告事項に格上げされたことは、FDAの強い問題意識を示しています。


この種の薬は血栓性血小板減少性紫斑症のリスクがあり、従来から警告事項になっています。追加事項の概要を訳すと、


CYP2C19の機能低下に伴う薬効の低下


clopidogrelの血小板凝集阻害作用は全て活性代謝物によるものだ。この代謝の一部はCYP2C19が担っているので、CYP2C19の遺伝子の多型やCYP2C19を阻害する薬の同時使用は妨げになる。CYP2C19の機能が低下している患者やCYP2C19を阻害する薬を服用している患者にPlavixを使うのは避けよ。


遺伝子多型


CYP2C19機能が遺伝子的に低下している患者は抗血小板反応が弱く、全般的に、通常の機能を持つ患者よりも心筋梗塞後の心血管イベント発生率が高い(臨床薬理:遺伝薬理の項を参照のこと)。



(遺伝薬理の項は以前書いたのと変わっていません。この問題に関する研究成果をまとめて、2C19*2や2C19*3多型を一つ又は両方の遺伝子に持つ人は活性代謝物のCmaxやAUCが30-50%低く、血小板凝集阻害検査値が30%以上悪く、心血管イベントのリスクが高いと述べています。)


薬物相互作用


プロトンポンプ阻害剤の一つでCYP2C19を阻害するomeprazoleをPlavixと服用すると、同時に服用しても12時間後に服用しても、Plavixの薬理学的活性が低下する。胃酸を抑制する他の薬、例えば多くのH2ブロッカー(CYP2C19阻害作用を持つcimetidineを除く)や制酸剤がclopidogrelの抗血小板活性に影響することを示すエビデンスはない(事前注意:薬物相互作用の項を参照のこと)。


何が理由で警告強化されたのでしょうか?ヒントになるのがこの事前注意:薬物相互作用のところに記されている相互作用試験です。


omeprazole


クロスオーバー試験で72人の健常者にPlavix(負荷用量300mgに続いて一日75mg)を単独またはomeprazole(80mg)と同時に5日間投与した。同時服用時はclopidogrelの活性代謝物の曝露が46%(第一日)と42%(第5日)低下し、平均血小板凝集阻害(IPA)は47%(24時間)と30%悪化した。別の試験では72人の健常者にこの二つの薬の同じ用量を、12時間離して投与した。結果は同様であり、時間をずらしても相互作用を防ぐことはできないことが示唆された。


omeprazoleは逆流性食道炎やびらん性食道炎、ピロリ菌除菌療法などに用いられていますが、一日用量は20mgまたは40mdです。ゾリンジャー・エリソン症候群のように胃酸分泌が著しく多い患者の治療は60mg-360mgと大変な高用量を使いますが、それにしても、80mgではありません。おそらく、2C19機能低下患者でomeprazoleの代謝が遅れて血中濃度が高くなる事態を想定したのでしょう。


薬物動態試験とex vivoの血小板凝集阻害試験だけで結論を出してよいのか、釈然としません。AHAとACC学会が出した声明も、FDAの警告内容を列記するだけで独自のコメントや、このようなケースで必ず付記される「現在服用している人は勝手に服用を止めず、心配なら医師に相談してください」という一文すらありません。FDAがここまで強く言っているからには他にも何か根拠があるのでしょう。この試験の論文刊行・学会発表が望まれます。最終的に薬を決めるのは医師なのですから、判断の手助けになる納得の行くデータを出さなかったら、警告を出しても無意味です。


さて、以前書きましたように、日本人は2C19機能低下多型を持っている人が過半を占めるようなので、私たちにとっては大変重要な問題です。考えてみれば、cimetidineと同時使用すると排泄が半減するticlopidineは日本では海外の半分の用量しか承認されていません。よくあることなので不思議に思いませんでしたが、ticlopidineが半分ならclopidogrelは海外より高用量を使うなり、それこそ2C19多型を検査して量を加減したほうが良いのかもしれません。


PCIとステント留置術に伴う心筋梗塞やステント血栓を防ぐ上で大変重要な薬ですから、日本人の過半がノンレスポンダーだとしたら大変なことです。厚生労働省や機構の皆さん、学会の先生方、この問題を放置して良いのですか?FDAのアクションを傍観して感染症の被害者を増やした、ドラッグラグならぬインフォメーションラグを繰り返してはいけません。



2009年11月7日土曜日

注射用のTamifluが存在した!

今回の新型インフルエンザの特徴は、重い呼吸器症状を発症して人工呼吸器が必要になる症例が多いことです。抗インフルエンザ薬はTamifluが経口投与、Relenzaは吸入なので、使いにくくなります。下痢や嘔吐症状のある患者にはTamifluは適さないかもしれません。日本で亡くなった2歳の女児はRelenzaを吸入しました。何か事情があったのでしょう。海外ではRelenzaをネブライザや人工呼吸器で投与することもあるようですが、乳糖が器具に張り付いて詰まるリスクがある様子で、死亡例も出ているようです。


注射できる抗インフルエンザ薬のニーズが高まっている折、アメリカの厚生労働省HHSが静脈注射用抗インフルエンザ薬三剤を合計3万コース分、3150万ドルで発注したと発表しました。


リンク:アメリカ厚生省プレスリリース


三剤は全てノイラミニダーゼ阻害剤で、一つは静注用薬として開発され日本でも先日、塩野義製薬が承認申請したperamivirです。一コース5日分2250ドルで1万コース分、発注しました。残りの二剤はTamifluとRelenzaの静注用製剤で、 一コース450ドルで各1万コースとなっています。アメリカがRelenzaの静注用製剤を入手しているという噂は前からありましたが、Tamifluもあったのですね。厚生省は、向こう2年間に三剤夫々を2万コース分追加発注するオプションも持っているようです。


peramivirは先日、特例的な使用許可が下りました。政府が戦略的国家備蓄として調達するものを供給します。残りの二剤はまだですが、今月中にFDAが『緊急時使用許可』を出すのではないでしょうか。


日本の政府はどうするのですかね。指をくわえて患者が死んでいくのを見ているつもりでしょうか。peramivirを特例的に緊急承認することはできないのでしょうか。



新型インフルエンザと基礎疾患

厚生労働省は、新型インフルエンザによる入院患者の調査データを定期的に公表しています。基礎疾患のある人が高リスクであることは分かりますが、無い人は本当に少ないのでしょうか?

リンク:日本におけるインフルエンザA(H1N1)の新型インフルエンザによる入院患者数について
次表の通りですが、多くの入院患者が出ている19歳以下では基礎疾患のない人のほうが多いことが分かります。政府は基礎疾患を持つ子供のワクチン接種を前倒しで開始しましたが、子供全員を対象にすべきではないでしょうか。


新型インフルエンザ入院患者累計数(年齢階級別、10月28日時点)
年齢階級-11-45-910-1415-1920-3940-5960-7980-合計
基礎疾患あり10149511278778496120561381
妊婦1212
慢性呼吸器疾患61024162024634395323921
慢性心疾患1378278171265
その他34488682943495021395
基礎疾患なし804221069536106764422102365
合計905711580814183160140142663746



構成比(%)
年齢階級-11-45-910-1415-1920-3940-5960-7980-合計
基礎疾患あり11.126.132.334.242.152.568.684.584.836.9
妊婦0.00.00.00.00.07.50.00.00.00.3
慢性呼吸器疾患6.717.926.324.825.121.327.937.334.824.6
慢性心疾患1.10.50.41.01.14.45.712.018.21.7
その他3.37.75.68.415.826.935.035.231.810.5
基礎疾患なし88.973.967.765.857.947.531.415.515.263.1

2009年11月1日日曜日

新型インフルエンザワクチンの副作用監視体制

新型インフルエンザ・ワクチンの生産・治験・接種はどの国も突貫工事で行われているので、その分、密接な副作用監視体制が必要です。厚生労働省の安全対策調査会の資料によると議会に特別措置法が提出される予定で、第一に、予防接種で健康被害を受けた人たちを救済する制度が設けられる予定です。死亡者には4280万円の補償金が支払われます。第二に、輸入ワクチンに関して、メーカーが損害賠償する必要が生じた場合、国が補償します。契約時の条項に盛り込まれているようです。


副反応の監視・発表体制は、11月上旬から2週間に一回、副反応報告とワクチン供給量の速報が出される予定です。確報は二週間遅れで、実際に接種した人数も公表されるようですので、発生率を把握することができます。このほかに、国立病院機構が最初の2万人を対象に副反応を集計し、コントロール(ワクチン接種しない人達の群)と疫学的解析を行う予定です。


インフルエンザワクチンは稀にギランバレー症候群のような重い有害事象も発生します。そこで、累計供給量が30万人分を超えた段階から、稀な有害事象の分析も行います。


新型ワクチンは優先順位が設定されていて、地方公共団体によって異なるようですが、国の計画では妊婦や特定の持病を持っている人は11月までに接種を開始する段取りです。安全性に不安を持つ人は、11月下旬まで待って副反応のデータを見てから決めても良いでしょう。


但し、接種してから免疫ができるまで1-3週間かかりますので、それまでに感染してしまうリスクもあることに注意してください。


ワクチン接種は一回か、二回か。インフルエンザの診療に従事する人以外は当面、二回接種とすることが民主党の足立政務官らの意向で決まりました。政治介入という揶揄もあるようですが、どちらかと言えば二回接種派の見解は科学的で、一回接種派のほうが政治的です。二回接種の治験結果がまとまるのは11月中旬で、接種開始に間に合わないので、見切り発車しようというのが一回接種派の基本的な考え方だからです。一方、二回接種派の意見は合理的ですが、今となっては遅すぎるような感じがします。本当は、妊婦や喘息症などの患者の試験をやるべきだったのに、放置したことが憾まれます。


南半球やアメリカの調べによると、妊婦や出産後の女性は重大な合併症のリスクが高いのですが、日本ではそれほどでもないようです。また、日本のインフルエンザワクチンは従来、原則として妊婦は接種しないことになっていました。海外の文献に基づいて方針転換が行われたのですが、日本のエビデンスがないのに接種勧奨するのは無責任といわれても仕方ないでしょう。緊急事態であり感染によるリスクも無視できないので止むを得ない判断なのでしょうが、臨床試験で事後的にでも検証することが必要なのではないでしょうか。



国産インフルエンザワクチンの効果

新型インフルエンザ・ワクチンの接種が始まりましたが、国産ワクチンの効果や安全性はどの程度なのでしょうか。治験の中間報告が出ていますので、見てみましょう。

この治験はS北研と呼ばれる北里薬品の製品を用いて、9月17日から国立病院機構の病院で20歳から59歳の200人を組み入れて実施しました。標準用量(15mcg/0.5mLを皮下注射)と倍量(30mcg/1mLを何故か筋肉内注射)の二群が設定され、二回接種する計画ですが、今回の中間報告は一回目の接種の3週間後、二回目の前に、ヘマグルチニン阻害抗体価を調べたものです。結果は、一回でも十分な効果があることが分かりました。


インフルエンザワクチンの有効率

標準量倍量
用量15mcg30mcg
投与方法皮下注射筋肉内注射
n9698
抗体保有率(%)7888
抗体陽転率(%)7588


出所:国産ワクチン臨床試験の中間報告(速報)(pdfファイルです)


数値は倍量群のほうが高いので、本当はこちらのほうが良いのかもしれません。副反応(副作用)の発生率は倍量群のほうが低いので、筋注のほうが良いのかもしれません。しかし、倍量群では高度の副反応が2例、発生しました。アナフィラキシーと皮膚の中毒疹で、何れも喘息症やアレルギーの既往歴を持つ患者で発生しました。喘息症患者は優先接種対象なので、心配になります。結局、無難なのは標準量、ということになるでしょう。但し、日本も海外と同様に筋注のほうが良いかもしれません。今後の課題です。

二回接種後のデータがまとまるのは11月中旬のようですので、現時点では有効率がどの程度向上するのか分かりません。また、優先接種対象のうち基礎疾患保有者や妊婦、高齢者、青少年に関するデータはありません。

現時点では海外のデータに頼らざるを得ません。丁度良いタイミングで、中国で行われた中国製ワクチンの試験結果がNew England Journal of Medicine誌で論文発表されたので、見てみましょう。

全部で2000例を超える、現時点では最大のデータです。日本と同じ不活化スプリットワクチンですが、三角筋に筋注したことと、11歳以下にも成人と同じ量を投与しているのが日本の標準用法と違います。61歳以上ですら一回の接種で79%が免疫を獲得できるという凄い結果になりました。季節性インフルエンザ・ワクチンのデータからは想像もできない良い数値です。


中国製ワクチンの効果(抗体保有率、%)
3-11歳12-17歳18-60歳61歳以上
n440550660550
一回後15mcg74.597.197.179.1
30mcg82.797.092.684.1
偽薬--10.7-
2回後15mcg98.1100.097.193.3
30mcg98.1100.098.196.3
偽薬--11.1-

出所:Zhuら、N Engl J Med 2009; 361:2414-2423


15mcgを一回接種した後の21日間の有害事象発生率は、注射箇所反応が6%、グレード3以上の重度なものは0.5%となっています。18-60歳では各9%と1.8%で、同じ世代の偽薬群は3%と0%でした。全身性有害事象は12%、グレード3以上は0%。18-60歳は15mcg群が各11%と0%、偽薬群は12%と1%となっています。因みに30mcgは注射箇所反応発生率は15mcgと大差なく、全身性は16%、グレード3以上が0.9%とやや高くなっています。

このデータはアジュバントが入っていないワクチンです。アジュバント入りは有害事象発生率がもっと高く、効果はもっと低いという変な結果になっています。

それにしても、中国は臨床試験に熱心ですね。治験を行うには社会や政府の後押しが必要です。日本はワクチン自給政策を取っているのですから、エビデンスについても自給自足できるよう取り組まなければいけません。


clopidogrelと2C19多型 Medcoの戦略

Plavix(clopidogrel)と2C19機能低下多型との関連は現在も議論の対象になっています。エビデンスを増やす必要がありますが、アメリカのPBM(薬剤費給付管理組織)Medco Health Solutions社が、新たな観察的試験、GeCCO試験を立ち上げました。急性冠症候群でPCIを受ける14600人を組入れ、09年10月開始、11年10月に完了する計画です。


リンク:ClinicalTrials.gov


PBMは医療保険の薬剤費管理を代行する組織です。購買力を生かして製薬会社から大口割引を引き出すと共に、ジェネリック薬の普及推進などを通じて医療費を抑制します。今回の試験の狙いを一言で言うと、2012年にclopidogrelのジェネリック薬が発売されることを睨んで、「2C19が正常に機能している患者には高価なEffient(prasugrel)ではなくclopidogrelのジェネリックで十分」というエビデンスを獲得することです。


アメリカは国民皆保険制ではなく、公的制度は高齢者向けのメディケアや低所得者向けのメディケイドなどだけで、国民の大半は民間の医療保険に加入しています。良し悪し両方ありますが、今回の試験は民業の長所を表しています。コスト削減策を正当化するためにきちんとしたエビデンスを作ろうとしていること、ジェネリック化の前に完了することでエビデンスを直ぐに活用できるようにしていること、などです。


この試験は前向きコフォート試験で、clopidogrelを服用する患者に2C19多型検査を行って、extensive metabolizers(機能喪失多型を持っていない)と判定された人の心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中のリスクを、prasugrelを服用する患者と比較します。


残念なのは、prasugrel群の多型検査は行わないことです。これまでの疫学的研究と同様に、もし2C19機能喪失変異自体が心血管リスク因子であった場合、研究の意味がなくなってしまいます。



Valsartanは名古屋では引き分けに

次は、同じくACCのLate-breakerで発表されたNagoya Heart Study(NHS)です。試験の内容や結果は納得できるものですが、分からないのは、Kyoto Heart StudyやJikei Heart Studyとの関係です。この二本の試験ではvalsart...