2009年11月1日日曜日

新型インフルエンザワクチンの副作用監視体制

新型インフルエンザ・ワクチンの生産・治験・接種はどの国も突貫工事で行われているので、その分、密接な副作用監視体制が必要です。厚生労働省の安全対策調査会の資料によると議会に特別措置法が提出される予定で、第一に、予防接種で健康被害を受けた人たちを救済する制度が設けられる予定です。死亡者には4280万円の補償金が支払われます。第二に、輸入ワクチンに関して、メーカーが損害賠償する必要が生じた場合、国が補償します。契約時の条項に盛り込まれているようです。


副反応の監視・発表体制は、11月上旬から2週間に一回、副反応報告とワクチン供給量の速報が出される予定です。確報は二週間遅れで、実際に接種した人数も公表されるようですので、発生率を把握することができます。このほかに、国立病院機構が最初の2万人を対象に副反応を集計し、コントロール(ワクチン接種しない人達の群)と疫学的解析を行う予定です。


インフルエンザワクチンは稀にギランバレー症候群のような重い有害事象も発生します。そこで、累計供給量が30万人分を超えた段階から、稀な有害事象の分析も行います。


新型ワクチンは優先順位が設定されていて、地方公共団体によって異なるようですが、国の計画では妊婦や特定の持病を持っている人は11月までに接種を開始する段取りです。安全性に不安を持つ人は、11月下旬まで待って副反応のデータを見てから決めても良いでしょう。


但し、接種してから免疫ができるまで1-3週間かかりますので、それまでに感染してしまうリスクもあることに注意してください。


ワクチン接種は一回か、二回か。インフルエンザの診療に従事する人以外は当面、二回接種とすることが民主党の足立政務官らの意向で決まりました。政治介入という揶揄もあるようですが、どちらかと言えば二回接種派の見解は科学的で、一回接種派のほうが政治的です。二回接種の治験結果がまとまるのは11月中旬で、接種開始に間に合わないので、見切り発車しようというのが一回接種派の基本的な考え方だからです。一方、二回接種派の意見は合理的ですが、今となっては遅すぎるような感じがします。本当は、妊婦や喘息症などの患者の試験をやるべきだったのに、放置したことが憾まれます。


南半球やアメリカの調べによると、妊婦や出産後の女性は重大な合併症のリスクが高いのですが、日本ではそれほどでもないようです。また、日本のインフルエンザワクチンは従来、原則として妊婦は接種しないことになっていました。海外の文献に基づいて方針転換が行われたのですが、日本のエビデンスがないのに接種勧奨するのは無責任といわれても仕方ないでしょう。緊急事態であり感染によるリスクも無視できないので止むを得ない判断なのでしょうが、臨床試験で事後的にでも検証することが必要なのではないでしょうか。



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