2010年6月20日日曜日

ROADMAP試験とORIENT試験

「ARB三部作」の最後はolmesartanの長期試験で脳心血管死が多かった件です。FDAがデータの概要と再検討開始を発表しました。今のところは容疑に留まっているようで、承認されている用途における便益がリスクを上回ると信じている、とのことです。二本の試験のうちROADMAP試験については昨年のASNで公表されていたようですが、この学会はメディカルジャーナリズムのカバレッジが低く、また、昨年は赤血球生成刺激剤Aranesp(「ネスプ」)の重大なアウトカム試験の結果が同日に発表されたため、陰に隠れてしまいました。グーグルしたところ二件ヒットし、Nephrology Timesのサイトに概要が記されていましたが、もう一つの私も時々読むニュースは偽薬群のほうが死亡者が多かったと逆に書いていました。私はFDAの発表を読んで初めて知ったのですが、主評価項目が成功したことは記憶にありますので、誤報を読んだために何の疑問も感じないまま忘れてしまったのかもしれません。

リンク:

ARBを服用している人が読むかもしれないので、一言書いておきます。特定の患者に最善な治療方法を判断できるのは事情を良く知っている担当医だけです。心配なら担当医に相談するとよいでしょう。FDAも言っているように、早合点して服用を勝手に止めてはいけません。

論文はまだ刊行されていないようなので、各種報道を参考にして概要を纏めておきましょう。ROADMAP試験は二型糖尿病で正常アルブミン尿、且つ、心血管疾患のリスク因子を一つ以上持っている患者4400人強を平均3年3ヵ月追跡した無作為化割付偽薬対照試験です。olmesartan(40mg/日)の腎症発生を遅らせる効果を検討したもので、主評価項目は微量アルブミン尿のリスク。副次的評価項目は脳心血管疾患やそれによる死亡など。欧州19ヶ国の施設で実施されました。

患者背景は、メジアン58歳、糖尿病歴平均6年、A1cは平均7.7%なのでやや高め、最高最低血圧は136/81 mmHgで8割が降圧剤を服用していました。ACE阻害剤やARBの同時服用は禁止されていましたが、それ以外の薬を使うことは可能で、治験中の群間差は5/3mm Hgとそれほど大きくはありませんでした。

結果は、微量アルブミン尿の相対リスク削減率が23%、p=0.0104となり、成功しました。eGFRでも有意な差がありました。但し、腎臓関連イベントは両群とも1%と少なく、同じでした。内容も血清クレアチニンの2倍化だけで、末期腎疾患はゼロでした。

ARBやACE阻害剤はマクロアルブミン尿症を合併した糖尿病患者の腎症の進行を遅らせることができますが、もっと早い段階の患者にも効果が確認されたのは初めてです。尤も、臨床的な転帰を変える効果は確認していないので、副作用や薬代に見合う効用があるかどうかは議論の余地がありそうです。

心血管イベントを減らすことができれば得点がグンと上がったのですが、何故か、両群大差ありませんでした。非致死的心筋梗塞は偽薬群より少なかったのですが、致死的心筋梗塞や突然心臓死が多く、相殺されました。心血管死は15例対3例でp=0.0115、全死亡は26例対15例で有意差はありませんでした。


ROADMAP試験の心血管イベント
olmesartan  偽薬群  
n2,2322,215
心血管疾患・死9694
心血管死153
 突然心臓死71
 致死的心筋梗塞50
 致死的脳卒中22
 PTCA/CABG関連死10
心血管疾患8191
非致死的心筋梗塞1726
非致死的脳卒中148


この試験の心血管データは違和感があります。降圧剤なら脳卒中が減りそうなものですが、むしろ増えました。ベースライン時点の最高血圧は136mm Hgなので、血圧は130mm Hg以下に下げても臨床的な転帰は改善せず、むしろ悪化する懸念もあるというJカーブ仮説を連想します。

尤も、偽薬群のデータが偶々良かったのかもしれません。メジアン58歳で3年間の死亡率が0.7%というのは大変低いように感じるからです。日本の55-59歳の人たち(人口全体)が一年間に死亡する確率と同じです。

olmesartanはORIENT試験でも同じように悩ましいデータが出ました。この試験は顕性蛋白尿を合併した二型糖尿病患者約570人を対象に日本と香港で実施された試験で、主評価項目は血清クレアチニン値の二倍化、末期腎臓疾患、または全死亡の複合評価項目。副次的評価項目は脳心血管疾患・死亡・下肢切断・血管再建術・不安定狭心症による入院などの複合評価項目でした。olmesartanは40mg/日を投与。ACE阻害剤の同時使用が可能で、73%が服用していましたが、ARBは不可、他の降圧剤は可でした。患者背景は血圧が141/77 mmHg、A1cが7.1%。平均追跡期間3.2年、治験中の血圧の群間差は2.8/1.8mmHgとなっています。

意外なことに、腎障害の進行を遅らせる効果は確認されませんでした(調整ハザードレシオ0.97、95%信頼区間0.75、1.24)。脳心血管アウトカムは調整ハザードレシオ0.64、95%信頼区間0.43、0.98と有意差がありましたが、主評価項目がフェールした以上、副次的評価項目は保守的に考える必要があります。p値は0.039とあまり低くないので、話半分に受け止めておいたほうが良さそうです。心血管死が多かったので尚更です。


ORIENT試験の脳心血管イベント
 olmesartan  偽薬群  
n282284
心血管疾患・死など4053
発生率14.2%18.7%
全死亡1920
心血管死103
突然心臓死52
致死的心筋梗塞11
致死的脳卒中30
原因不明の心血管死10
非致死的心筋梗塞37
非致死的脳卒中811

注:「心血管疾患・死など」には下肢切断なども含む。

非致死的なイベントは減ったのに致死的なイベントが増え、主犯が突然心臓死であることは二本とも共通しています。ROADMAP試験だけなら偶然のような印象もありますが、ORIENT試験である程度の再現性が見られたのは減点材料と言わざるを得ません。

olmesartanは他のARBほど沢山のアウトカム試験が実施されていないので、他の試験とめたアナリシスを行っても良い数値は出ないのでないのではないでしょうか。個々の症例について他の理由で説明できるかどうか、検討するしか方法は無いでしょう。非致死的心筋梗塞が減るのですから、突然心臓死は虚血性というよりは不整脈性のような気がします。一つ、注目されるのは8月31日にESC欧州心臓学会のホットラインで発表されるANTIPAF試験のデータです。olmesartanの発作性心房細動再発防止効果を検討するためにGerman Atrial Fibrillation Networkが実施したもので、400人規模なので十分ではありませんが、もし安全性面で問題が無ければ、判断材料の一つになるかもしれません。

それにしても、ORIENT試験で心血管死が多かったというのは初耳でした。早く論文を刊行してもらいたいものです。


ARBと癌

ARBの安全性について気になる話が出ています。FDAはolmesartanの長期試験で心血管疾患による死亡者が多かったことについて、検討を始めたことを公表しました。数日後にはLancet Oncology誌に、ARBの試験で癌の発症が多かったというメタアナリシスが刊行されました。FDAの検討・結果発表が待望されます。

この問題は私如きが迂闊に論じるのは不適切なのですが、知識を整理するために事実関係を復習したので、ここにメモしておきたいと思います。あくまで、メモです。

その前に、ARBを服用している人を不安にさせてはいけないので一言書いておきましょう。ARBのような降圧剤は高血圧患者が心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクを削減することができます。今回、話が出ているolmesartanの脳心血管疾患死亡リスクやtelmisartanなどARB全体の癌発症リスクは、そのような疑いが生じたというだけで確立した話ではありませんし、リスクの程度も、脳心血管疾患を防ぐ効果と比べれば小さいようです。問題視されているのは服用者が多く、小さなリスクでも世界中合わせれば多くの人が影響を受ける可能性があるからです。

患者は一人一人異なるので、特定の患者をどのように治療するか判断できるのは担当医だけです。心筋梗塞を発症して再発リスクが高い人と、メタボで腹囲や血圧が少し高いだけの人では最適な治療方針は異なるでしょう。情報は幅広く収集すべきですが、自分一人で結論を出さずに、心配なことがあったら担当医に相談するのが一番良い方法です。

さて、Lancet Oncologyの論文は読んでいないのですが、分析対象の試験のうち中心になったのはtelmisartanの三本の大規模試験、ONTARGET、TRANSCEND、PROFESSのようです。telmisartanはONTARGETとTRANSCENDの結果に基づいて心血管疾患リスクを削減する効能が欧米で承認されました。米国は諮問委員会でも議論されましたが、その時にベーリンガー・インゲルハイムが用意したブリーフィング資料に基づいて、データを見てみましょう。

ONTARGETとTRANSCENDでは癌のリスクに関して通常以上の監視報告体制が取られました。ONTARGETで対照薬に設定されたramiprilが、HOPE試験で癌の発症数が多かったからです。ベーリンガーの薬ではありませんが、HOPE試験とtelmisartanの二本の試験は何れもカナダのMcMaster大学のS. Yusuf博士等が中心になって実施しました。この機会にramiprilの安全性を確認する意図だったのでしょう。


HOPE試験の癌発症データ
 偽薬群 試験薬群
n4,6524,645
重篤有害事象:癌3554
発生率0.75%1.16%

注:被験者の平均年齢は66歳、平均追跡期間は3.5年。


ONTARGET試験は、telmisartanとramiprilを併用した群で癌の発生リスクが1.14倍と、僅かですが統計的に有意に多いという結果になりました。telimisartanだけを投与した群では有意な差がありませんが、もしramiprilにリスクがあるのだとしたら、安心できません。実薬対照試験の弱点です。


ONTARGET試験    併用群    telmisartan群ramipril群
n8,5028,5428,576
癌発症・死亡数824762735
癌発症・死亡率9.7%8.9%8.6%
百人年当りHR1.141.05
95%信頼区間1.03、1.260.94、1.16
致死的癌242200204
百人年当りHR1.20.99
95%信頼区間1.00、1.450.81、1.20
BL時点で癌では
なかった人 n
7,9688,0018,032
癌発症・死亡数690645625
百人年当りHR1.121.04
95%信頼区間1.01、1.250.93、1.16

注:HRはハザードレシオでramipril群に対する比率、BLはベースライン。被験者の平均年齢は66歳、メジアン追跡期間は4年8ヶ月。



一方、TRANSCEND試験ではハッキリしない結果になりました。無作為化割付された全ての症例の解析では偽薬より多かったものの有意水準までは届いていません。しかし、BL(ベースライン)時点で癌と診断されていなかった人だけの解析では有意差が出ています。

脳梗塞再発予防試験PRoFESSでは偽薬より少しだけ少なく、有意差はありませんでした。この試験は癌を密接に監視する体制が取られなかったのでデータの信頼性がやや低く、また、BLで癌と診断されていなかった人の解析はありません。



telmisartan群    偽薬群    
TRANSCEND試験:
n2,9542,972
癌発症・死亡数236204
発症・死亡率8.0%6.9%
百人年当りHR1.78
95%信頼区間0.97、1.41
致死的癌6665
百人年当りHR1.02
95%信頼区間0.73、1.44
BL時点で癌では
なかった人
2,8092,827
癌発症・死亡数206169
発症・死亡率7.3%6.0%
百人年当りHR1.24
95%信頼区間1.01、1.52
PRoFESS試験:
n10,01610,048
癌発症・死亡数326340
発症・死亡率3.3%3.4%
百人年当りHR0.92
95%信頼区間0.79、1.05
致死的癌7173
百人年当りHR0.95
95%信頼区間0.83、1.08

注:TRANSCEND試験は平均年齢66歳、メジアン追跡期間4年8ヶ月、PRoFESS試験は66歳、2.5年で脳梗塞再発予防効果を調べたものであることが他の二本と異なる。


ONTARGET試験の併用群は単剤投与群より副作用が多いだけで効果は同じという結果になったため、この用法は正式には承認されていません。単剤投与に関するエビデンスは、三本の試験のうち二本でシグナルが見られ、一本では全く見られませんでした。発生部位は特別な偏りはなく、この年代の人に一般的な肺癌や前立腺癌がtelmisartan群でやや多かったのですが、イベント数が少ないので統計学的な有意性を検討しても無意味でしょう。

新薬の副作用リスクを早期に把握するために、特殊なマウスやラットに著高量を長期間投与する試験を行うのが通例です。人間に何十年も投与する試験を行うのは不可能ですが、寿命の短い動物ならほぼ一生に亘る投与も可能です。telmisartanも、candesartanも、長期癌原性試験で懸念は浮上していません。

臨床試験で発癌性を検討することは殆ど不可能です。発がん物質と認定されているものでも誰かを癌にしようと思ったら、著高量を何年間も投与しなければなりません。ONTARGETのような大規模な試験でも答えは出ないのです。逆に言えば、たった4-5年投与するだけで癌になるとしたら、発癌物質ではなくプロモーターとして機能しているのでしょう。偶々発生した小さな癌の成長を促進し、結果的に、発見され易くするのです。しかし、ARBがプロモーターになるという話は聞いたことがありません。

臨床試験では何百という有害事象項目が報告されますが、評価項目が多ければ多いほど、偶然に有意差が出てしまうリスクが高まります。p値が0.01であるということは偶然に有意差が出る確率は100回に一回という意味なので、500種類の有害事象を解析すれば5項目でp=0.01となる勘定になります。大規模な試験は有害事象のイベント数が大きくなるので、ノイズを拾ってしまう確率が更に高まります。

FDA側のブリーフィング資料でも癌について検討していますが、シグナルが明確ではないこと、癌原性試験に問題がなかったこと、ARBに癌のリスクがあるとは考えられていないことなどから、深刻な懸念というよりは偶然の悪戯であることを疑っているようです。但し、ARB全体のデータを再検討したほうが良いと記されています。おそらく、既に着手したでしょう。

EUも適応拡大を認めましたが、審査文書には癌の話は一言も出ていません。EUの医薬品評価委員会も深刻な問題とは認識していないのでしょう。

以上、まとめると、データ上はシグナルが出ていますが、俄かには信じがたい話です。癌のような稀なイベントは大規模な試験でも十分な検討はできないので、個々の治験の論文では、大きな偏りがない限り言及されないでしょう。通常は肺癌とか前立腺癌とか、部位毎に集計するので深刻な有害事象の一覧表からも漏れがちです。論文を対象とするメタアナリシスは、リスクがあった治験だけが対象になり、なかったために論文で言及されていない治験が無視されるパブリケーション・バイアスがあるかもしれません。また、リスクを検討する場合は特定の製品だけでなく同じ種類の薬のデータを総覧したほうが検出力が高いので良いでしょう。これができるのは、全てのデータを把握しているFDAだけです。Lancet Oncologyの論評者であるNissen博士が主張するように、FDAが何らかの声明・結論を出すべきです。

最後に、candesartanの心不全アウトカム試験、CHARM三試験の癌のデータも見てみましょう。この試験は慢性心不全患者の転帰を改善する効果を、ACE阻害剤服用者、ACE阻害不耐(非服用者)、心機能保持(病状が比較的軽い)の夫々について検討したものです。データはFDA諮問委員会のブリーフィング資料から拾いました。

ACE阻害剤に追加したCHARM-Added試験では、重篤な有害事象として90人の新生物が報告され、偽薬群の68人を上回りました。有意性は不明ですが簡便法で試算するとリスクは1.8倍、95%信頼区間の下限は1.05なので、ありそうです。1000人年当り発生率は9.1対5.1で、追跡期間の違いを加味しても多いです。ところが、CHARM-Alternative試験では両群同じでした。三本の試験の合計ではやや多いですが、有意差はなさそうです。Preserved試験のデータは(適応拡大申請の対象ではなかったので)記されていませんが、引き算すると、むしろ少なかったようです。これらのことから、FDAは特に深刻な問題とは考えませんでした。


candesartan群  偽薬群  
CHARM-Added:
新生物9068
発生率3.0%1.6%
致死的新生物3920
-Alternative:
新生物5959
発生率5.8%5.8%
致死的新生物2318
CHARM三試験合計:
n3,7963,803
新生物244230
発生率6.4%6.0%
致死的新生物8459

注:CHARM試験は慢性心不全の三本の試験の総称で、-AddedはACE阻害剤服用者にcandesartanを併用、-AlternativeはACE阻害剤不耐、-Preserved(癌のデータが分からないので割愛)は心機能保持患者を組み入れた。三本合計で平均年齢66歳、メジアン追跡期間3年2ヵ月。

telmisartanの試験と似たような格好ですね。三本合計値で上回っているのでリスクがないとは言えないのでしょうが、ありそうにも見えません。

沢山の患者が服用している薬で、僅かとは言え懸念材料が発見されたのは重要です。もし患者が不安になって勝手に服用を止め、心筋梗塞や脳梗塞を被ったら大変なので、FDAは早急に声明を出すべきでしょう。


新参者の辛い立場

ARBで心配な話が続けて出たことは驚かされます。世界で何千万人、もしかしたら1億以上の患者が服用している薬ですから見なかった振りをすることは出来ません。Nissen博士が言っているように、FDAが精査して結論を公表してほしいと思います。


それにしても、ARBにケチを付けるなら、Lancet Oncology誌は論文又は論評をopen accessにすべきでしょう。抄録は購読者でなくても読むことができますが、全体像が分かりませんし、このようなメタアナリシスの制約について言及していないので読者を必要以上に怯えさせる可能性があります。メタアナリシスはリスクが何倍、という表現になりますが、百人に一人のリスクが1.3倍になるのと、10万人に一人のリスクが1.3倍になるのとでは話が全然違います。個々の試験のデータも見なければストーリーが完結しません。


今回の懸念に関して私が何を知っているわけでもないのですが、何故このような悪い話が陸続しているのか、背景に関して私なりの考えを書きます。


広く用いられている薬の安全性に関する懸念材料が色々と出ています。背景の一つは、薬の安全性に関する監視が厳しくなったことでしょう。特にアメリカでは、臨床試験の十分な裏付けが無いアグレッシブな治療や未承認薬使用が広く行われているので、改めて安全性を問う機運が高まっています。Archives of Internal Medicine誌が5月10日号でLess is Moreというキャッチフレーズを付けて、プロトンポンプ阻害剤を乱用するリスクに関する三本の論文を刊行したのも、このような流れを反映しています。


安全性監視が強化された結果、アウトカム試験でも有害事象の監視が強化されるようになりました。大規模長期アウトカム試験は新薬承認申請用の短期間の試験とは異なり日常の医療に即した形で行われます。医師が患者に会うのは何も無ければ半年に一回だけなので、有害事象の監視も疎かになりがちです。また、臨床試験における有害事象報告は医師の判断に委ねられているので、その薬と関係があるとは誰も思っていない副作用は見逃される可能性があります。有害事象監視強化が成果を挙げた一例は、グリタゾン系の二型糖尿病薬です。発売後何年も経ってから骨折リスクが判明したのは長期試験の一つで偶々発見されたからですが、治験執行委員会やメーカー側がキチンとした監視・分析体制を敷かなかったら、発見できなかったでしょう。


テクニカルな事情もあります。製薬会社が巨額を投じて長期大規模な試験を行うようになった結果、治験の検出力が高まりすぎて、これまで見落とされていたリスクや、真実とは異なるノイズを拾ってしまうリスクが高まったことです。ARBやコレステロール治療薬のように、既に沢山の製品が存在し数々のアウトカム試験が実施済みな分野では、新参者、例えばtelmisartanやolmesartan、rosuvastatin、ezetimibeは困難な課題に挑戦せざるを得ません。高力価スタチンが急性心筋梗塞を発症した高リスク患者に有効であることはatorvastatinの数々の治験が立証済みなので、今更rosuvastatinの偽薬対照試験を行う訳には行きません。やるならatorvastatin対照試験ですが、両剤のLDL-C治療効果は同程度なので、優越性試験をやっても失敗するでしょう。かと言って、非劣性試験は数多くの患者を組み入れなければならないので費用や時間が掛かります。telmisartanのONTARGET試験は単剤でramipril(本邦未承認ですが海外ではACE阻害剤のNo.1と考えられている)と非劣性、併用でramiprilより優越性を検討する欲張りな内容だったため、25000人を超える大規模な試験になりました。それでも、FDAは適応拡大の承認審査に当って非劣性マージンが大きすぎる、もっと大きな試験をやるべきだったと主張しました。


telimisartanは三本の大規模試験が実施された結果、一部の試験で癌の発生状況に有意な群間差が生じるという意外な発見がありました。ramiprilの試験で癌の発症に偏りがあったため、ONTARGETとTRANSCEND試験では癌を厳格に監視し、症例報告を第三者が査読するプロトコルも導入されました。この試験の癌のデータは、万全ではないにしても、他の試験より信頼性が高いことになります。


新参者に残されたもう一つの方法は、既に十分な治療を受けている患者や、リスクが小さい患者に対する効能を立証することです。一例はrosuvastatinのJUPITER試験で、心血管疾患の初発予防に成功しました。低リスク患者の試験はイベント数が少ないので有意差を出すためには沢山の患者を組み入れざるを得ません。JUPITERは17000人を越える大規模試験になりました。その結果、糖尿病の発症状況に有意な群間差が生じるという意外な発見がありました。


以上のように、アウトカム試験の規模や内容は年々、充実してきています。新薬が挑戦すべきハードルも年々、高くなっています。新参者の試験でネガティブな発見があると、やっぱり長年の市販歴やアウトカム試験の裏付けが豊富な薬のほうが安心だね、と思いがちですが、新参者の辛い立場も少しは斟酌してあげて下さい。


尚、私はベーリンガー・インゲルハイムやアストラゼネカに何の恩義も無く、肩を持つつもりはありません。利益相反表明をするのが流行っていますが、私は昨年、両社から一銭も貰いませんでした。妻がメロキシカムを服用しているので、収入どころか赤字です(笑)。



2010年5月15日土曜日

あの試験は今:JUPITER試験

rosuvastatinの心血管イベント初発予防効果を調べたJUPITER試験は、2008年に結果が発表されると大きな反響を呼びました。外見上は健康に見える人の中から高感度CRP検査を用いて本当はリスクの高い患者を発見し、rosuvastatinで治療するという斬新な手法を巡って、賛否両論が沸き起こりました。


アストラゼネカは欧米で効能追加申請を行いましたが、部分的にしか承認されませんでした。FDAはCRP値が高いだけでは不十分と判定し、欧州に至っては添付文書にCRPという言葉が一言も出てきません。ポストホック・サブグループ分析という不確かなエビデンスに基づいて効能を記述していて、CRPをネグレクトしました。


なぜ、私達の評価と承認組織の評価がこんなに大きく分かれたのでしょうか?私達の知らないデータがあったからです。高感度CRP検査の重要性を検討する上で重要なサブグループ分析の結果が、学会発表や論文から抜け落ちていたために、治験結果を正しく理解することができなかったのです。意図的とは思いたくありませんが、事前に計画されていた重要な解析であることや、データの内容が高感度CRPの有用性に疑いを持たせるようなデータであったことを考えれば、不都合な真実を秘匿したのではないかという疑いを持たざるを得ません。


最初にアメリカの添付文書を見てみましょう。承認された適応は、冠状心疾患をまだ経験していないが複数のリスク因子を持っている患者の心筋梗塞、脳卒中、動脈再開通施術のリスク削減です。具体的な要件は、男は50歳以上、女は60歳以上で高感度CRP値が2mg/L以上の人のうち、高血圧やHDL-C低値、喫煙、早発性冠状心疾患の家族歴のうち一つ以上に該当する患者となっています。JUPITER試験は高血圧症などのリスク因子を持たない人も組み入れていたのですが、このサブグループに対する効能は明確ではないと判定されました。年齢と高感度CRPだけしか該当しない患者(n=1405)のポストホック分析で治療効果が見られなかったと記されています。



次はヨーロッパの添付文書です。適応症は高リスク患者の主要心血管イベントの初発予防。高リスク患者の具体的な定義は記されていません。最初から最後まで、CRP検査には言及せず、JUPITER試験の対象が高CRP値患者であったことすら記されていません。治験成績についても主評価項目には触れず、ポストホックのサブグループ分析の結果だけが記されています。一つはアメリカのNCEPガイドラインでも採用されているフラミンガム・スコアが20%以上だった1558人のデータで、心血管死・脳卒中・心筋梗塞が偽薬比顕著(p=0.028)に低下し、絶対リスク削減率は1000人年当り8.8というものです。もう一つはヨーロッパで開発されたSCOREに基づいてリスクが5%以上と推定された9302人のデータで、リスクが有意に減少(p=0.0003)し、絶対リスク削減は1000人当り5.1でした。どちらのサブグループ分析でも、全死亡は有意差がありませんでした。治験の趣旨や意義が全く汲み取られていない、大変意外な内容です。



CRP検査の意義が矮小化された理由は、ベースライン時点のCRP高値グループと低値グループに分けたサブグループ分析が奇妙な結果になったからでしょう。JUPITER試験は、高感度CRP値が2mg/dL以上の患者はLDL-C値などが正常であってもリスクが高い、あるいは、rosuvastatinの治療効果が大きいという前提の下に実施されたのですが、2mg/dL未満の人が組み入れられていないので前提の妥当性を検討することはできません。ヒントになりそうなのがCRP値が被験者の中央値以上だった患者と以下だったグループに分けて実施されたサブグループ分析です。昨年12月にFDAが諮問委員会で公表した資料によると、rosuvastatinはどちらのサブグループにも効果があったのですが、この二つのグループの偽薬群のイベント発生率はほぼ同じ(中央値以上のグループは13.7%、以下のグループは13.5%)で、高いグループのほうがリスクが高いようには見えませんCRP値が4mg/dLより上か下かで分けたサブグループ分析を見ても、同じです。rosuvastatinのリスク削減率を見比べると、中央値より低いグループや4mg/dLより低いグループはリスクが5割以上低下したのに、高いグループは3割程度でした。CRP値が2mg/dL以上であることだけが重要で数値が特に高くても問題は無い、という仮説も立てられますが、しかし、常識的に考えれば数値が高ければ高いほどリスクが高そうなものです。


このデータは事前に計画されていた重要な解析であるにも係わらず、学会・論文発表では割愛されました。何か特別な理由があったのかもしれませんが、一般的に、結果が出た後で都合の良いデータを選んで発表するのは禁じ手です。治験論文のサブグループ分析の表にはポストホック分析も載っているので、スペースの制約が理由とは思えません。


「JUPITER試験はここが変だ」に書いたように、この試験は全死亡に有意差があったことが喧伝されましたが、心血管疾患による死亡数や有意差の有無については明らかにされませんでした。有意差は無かったのですがトレンドは見られましたので、不都合な真実を隠したと文句を言うほどではありません。しかし、CRP高値と低値のサブグループ分析が公表されなかったのは残念です。



2010年4月25日日曜日

シブトラミンの心血管安全性問題

シブトラミンは危ないところでした。09年7月に薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を通過したのですが、9月の薬事・食品衛生審議会薬事分科会で継続審議となり、承認が遅れました。その2ヵ月後に、欧州などで実施されたSCOUT試験の結果が纏まり、心血管疾患歴のある患者に投与すると心血管疾患リスクが高まることが発覚、欧州では承認取消になりました。米国でも心血管疾患歴が禁忌になりました。シブトラミンは肥満・太り過ぎの患者が体重を減らして心血管疾患を防ぐための薬なのですから、体重が減っても心血管疾患が増えるのでは意味がありません。

日本の承認が遅れたのはPMDAや審議会にとってラッキーだったのかもしれません。シブトラミンは以前から心血管リスクが疑われていて、汚名を返上するために実施されたのがSCOUT試験なのです。09年に結果が発表されることは周知の事実だったのですから、もし結果を待たずに承認してその直後に心血管リスクが発覚したら、日本の新薬承認審査はザルと批判されていたでしょう。

シブトラミンの安全性問題の経緯


  • 97年11月:アメリカで肥満・太り過ぎ患者の体重管理薬として承認、翌年に発売

  • 99年1月:ドイツで承認

  • 01年6月:他のEU加盟国でも相互認証方式で承認

  • 02年3月:イタリアが一時的に販売承認を停止。市販後の有害事象報告が同年2月時点で99例に達したため。うち10例は重篤。

  • 02年6月:EUのCHMPが治療による便益はリスクを上回ると判定、販売承認継続を勧告。同時に、承認時の約束である心血管アウトカム試験を早く開始するようメーカー側(アボットのクノール部門)に要請。

  • 02年:心血管アウトカム試験のSCOUT試験が開始

  • 02年12月:フランス政府が使用制限を導入。治療開始できるのは心臓・内分泌学専門医及び内科医だけ、治療期間は1年以内。

  • 07年11月:アボットから日本の独占開発販売権を取得したエーザイが日本で承認申請。BMIが25kg/m2以上の二型糖尿病患者342例を組み入れた1年間の試験で体重が平均5%減少、プラセボは1.97%で統計的に有意。

  • 09年7月:薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を通過

  • 09年9月:薬事・食品衛生審議会薬事分科会で継続審議に

  • 09年11月:SCOUT試験の結果が欧米などの承認審査機関に報告

  • 09年12月:CHMPが承認取消を勧告

  • 10年1月:FDAが心血管疾患既往あるいは管理不良高血圧を禁忌に格上げ。販売継続は認めた。


EUとアメリカで対応が分かれたのは、SCOUT試験が心血管疾患のリスクが高い患者だけを組み入れた試験だからでしょう。心血管リスクが高くない患者ならベネフィットがリスクを上回ると判定したのです。以下のサブグループ分析を見ると、確かに有意差が出たのは二型糖尿病と心血管疾患を併発した患者だけです。


SCOUT試験のサブグループ分析
サブグループプラセボシブトラミンHR
(95%CI)
p値
二型糖尿病のみ(n)1,1781,2071.0100.951
イベント発生数7779(0.737,
発生率6.5%6.5%1.383)
心血管疾患のみ(n)7937591.2740.151
イベント発生数6677(0.915,
発生率8.30%10.10%1.774)
二型糖尿病且つ
心血管疾患(n)
2,9012,9061.1820.023
イベント発生数346403(1.024,
発生率11.90%13.90%1.354)


注:SCOUT試験は二型糖尿病のみ、心血管疾患のみ、二型糖尿病と心血管疾患の両方、の三種類の肥満・太りすぎ患者約1万人を組み入れた。解析対象イベントは心臓発作、脳卒中、心停止蘇生、心血管死。


しかし、このデータを見るだけではどんなベネフィットがあるのか分かりません。3月のACC心臓学会でデータ発表されるはずだったのですが、撤回されたようです。JACCの抄録集には掲載されているのですが、ACCのオンライン・プランナーではいつの間にか削除されているからです。この抄録は「学会で結果発表する予定」としか記されていないので一番知りたい点、つまり、体重がどの程度減ったのかが分かりません。

体重管理薬の効果は一時的で、最初は体重が減少しますが6-9ヵ月で下げ止まり、その後は徐々に上昇します。服用を止めると体重が元に戻ります。効果は長期的に持続するのか?服用中止率はどの程度なのか?肝心の点が未発表なのです。

最後に、日本の二つの審議会の議事録が公表されているので、長文になりますが引用しておきましょう。但し、薬事分科会のほうは伏字(白い四角)ばかりなので意味不明です。

平成21年7月24日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録



○松井部会長 それでは議題4について、医薬品機構から概要を説明してください。

○機構 議題4、資料No.4の医薬品オベスケアカプセル10mg、同カプセル15mgの製造販
売承認の可否等について、御説明いたします。

 本剤の有効成分であるシブトラミン塩酸塩水和物は、英国Boots Pharmaceuticals社(現Abbott Laboratories社)の合成されましたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)であり、開発当初はうつ病を対象とした臨床開発が実施されています。この過程で、うつ病に対する有効性は認められなかったものの、体重減少が認められたことから、19□年より抗肥満薬としての開発が開始され、1997年11月にメキシコで初めて承認されて以来、2009年2月現在、83か国で承認されています。本邦では、19□年□月より第I相試験が開始され、今般BMIが25kg/平方メートル以上で、内臓脂肪蓄積を伴い、2型糖尿病及び脂質代謝異常を有する肥満症に対する適応で承認申請が行われました。なお、類薬としてはマジンドールが承認されています。

 本申請の専門委員としまして、資料No.12に記載されています12名の委員を指名させていただきました。

 まず、有効性についてですが、審査報告書49ページの上の表を御覧ください。国内第III相試験において、主要評価項目である最終評価時におけるベースラインからの体重変化率及び体重変化量は、本剤群でそれぞれ-5%及び-4.19kg、プラセボ群でそれぞれ-1.97��及び-1.62kgであり、本剤群はプラセボ群と比較して有意に体重を減少させました。次に、審査報告書56ページの中段の図を御覧ください。本剤の投与により、内臓脂肪面積及び腹囲の減少が認められており、弱いながらも体重減少との相関性が確認されています。一方、本剤投与によりHbA1Cや空腹時血糖値等の血糖関連パラメータ及びトリグリセライド、HDLコレステロール及び総コレステロールといった脂質代謝パラメータの改善も認められておりますが、体重減少との相関性は明確ではありませんでした。

 以上を踏まえまして、審査報告書77ページの上から2行目以降を御覧ください。本剤の臨床的意義は、本剤の投与により体重を減少させ、適切な生活習慣の確立へと患者を導くことにあると考えておりますが、本剤の有効性として、日本人で明確化されているのは現時点で体重減少のみであり、海外での効能・効果も参考とすると、本剤の適正使用を推進する観点から、効能・効果としては「BMIが25kg/平方メートル以上で内臓脂肪蓄積を伴い、2型糖尿病及び脂質代謝異常を有する肥満症における体重管理(ただし、食事療法・運動療
法を行っている患者で十分な効果が得られない場合に限る)」と設定することが適切と判断しております。なお、この効能・効果と関連して、本剤投与後には患者が適切な生活習慣を確立できるよう生活習慣の改善に取り組むとともに、定期的に体重等を測定して、効果不十分の場合には、投与の中止も検討する必要があることなどを、用法・用量に関連する使用上の注意の項で記載し、本剤を漫然と投与しないように注意喚起しております。なお、適切な診断及び適正使用を推進するための講習会の実施や、適正使用ガイドの配付などが行われる予定となっています。次に、本剤投与による安全性についてですが、審査報
告書60ページの中段の表を御覧ください。国内臨床試験において、本剤の投与により、血圧及び脈拍数の上昇が認められており、最終評価時の体重減少率が5%以上であったか否かで層別したところ、体重減少が5%未満の群で本剤群による血圧及び脈拍数の上昇後の程度が大きかったという結果になっております。また、同ページの上の図を御覧ください。海外臨床試験における血圧上昇及び脈拍数の増加の時期別の発現率を示していますが、投与開始6か月までに約80~90%が認められています。これらを踏まえて、添付文書の重要な基本的注意の項で、投与6か月までは少なくとも1か月に1回、それ以降も定
期的に血圧と脈拍数を測定するよう注意喚起をしているところです。なお、本剤によるこれらのリスクを踏まえ、海外での添付文書を参考とし、「冠動脈疾患、うっ血性心不全、不整脈又は脳血管発作の既往歴のある患者」及び「コントロール不十分な高血圧症患者」への本剤の投与については、禁忌と設定しております。また、本剤の心血管系の有害事象等の発現状況については、製造販売後調査において、引き続き検討を行うこととなっております。

 以上の審査を踏まえ、本剤のBMIが25kg/平方メートル以上で内臓脂肪蓄積を伴い、2型糖尿病及び脂質代謝異常を有する肥満症における体重管理(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合に限る)に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。

 本申請は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しています。以上です。よろしく御審議のほど、お願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございました。それでは、参考人の川上教授から補足等ございましたら、お願いいたします。

○川上参考人 私は、糖尿病や脂質代謝異常症などの患者を診る機会が非常に多いのですが、肥満が大本にあると考えられることがしばしばあります。これは、単純に体重が多いというだけではなくて、肥満症といいますか、体重が多いことによって健康障害がきていると考えられる症例がしばしばあります。これらの患者は、減量だけですべてが解決するとは限りませんが、減量することによってかなり病態がよくなる、あるいはほかの薬の使用量が減ることは、明らかに分かっています。患者自身も、かなりそれに努力されている、また栄養士あるいは理学療法士等々でかなり指導をしていても、実際にはこの現代社会の中において肥満を完全に自分自身でコントロールできるということが必ずしも容易ではないというのが現状です。

 そのようなことで、薬としては今御紹介がありましたようにマジンドールが使われているわけです。マジンドールを使った症例では、皆さん減量が楽といいますか、食事療法を守ることが楽になるということで、喜んでおられる方が多いのですが、マジンドールは非常に縛りがきついのです。まず、適応がBMIで35以上で、しかも3か月しか使えないために、適応の範囲が非常に狭いということで、現場ではより広く、また有効な薬剤が使用できることを期待しています。そういう意味で、これによってすべてが解決するわけではありませんが、これは食事療法・運動療法を促進する上において、非常に有効であると
我々は考えているところで、薬を飲めばすべてが解決するというわけではありません。

 もう一つ予防ですが、この場合は適応が脂質異常症あるいは2型の糖尿病ということになっています。特にアメリカの例などを見ますと、耐糖能異常の患者に運動療法・食事療法で減量をさせた場合に、3年間の糖尿病への移行が50%減ると言われておりますので、そういう意味でも減量、体重の適正な維持は、疾患の予防という意味でも大事だと考えられます。また、昨年から肥満治療学会が発足されていまして、これは肥満のメカニズムだけではなくて、切実に肥満をどのように治療したらいいのかを、学会レベルで検討しなければいけないということで始まった学会です。その中で一つの治療の方法として、胃を小さくする、あるいは胃と腸をバイパスして吸収を悪くする、あるいは胃をバンディングで縛って食べる物を食べられなくするというような治療法、いわゆる外科的治療というものが行われるようになっています。その適応の患者が、今年の学会での推定では、日本人で14万人といわれています。ですから、そういうところにいく前の予防の意味においても、こういう薬物を使ってでも、望ましいとは必ずしも言えないかもしれませんが、そういう意味での現場の必要性という意味では、切実なところがあると我々は感じております。以上です。

○松井部会長 ありがとうございました。それでは、委員の方々から御質問、御意見をお願いします。

○野田委員 二点ございます。まず一点目は安全性の方で、今名前が出ていますマジンドールでは依存性ということがありましたし、この薬剤の性質からして、自殺念慮などがあると思いますが、それについて少し詳しく御説明していただければと思います。

○機構 審査報告書の66ページをお開きください。本剤に関しては、依存性に関して検討しておりまして、非臨床試験において、マジンドールと比較して、依存性を検討しております。この中でこの薬に関しては、アンフェタミンなどと同様の作用は示していないということで、この薬に関して作用はないということが確認されています。また、臨床試験で第II相試験の中で、この薬を飲みたいかということを投与終了後及び投与終了後4週間後に依存性に関するアンケートを取っていますが、この中でも依存性がないことが結論として出されております。

○松井部会長 今の御質問の中に、自殺念慮のことがあったように思いますが。

○機構 自殺の方なのですが、審査報告書64ページを御覧ください。自殺リスクに関しては、この薬に関して臨床試験の中で、国内では自殺関係の有害事象は認められておりません。海外の臨床試験の中でも、企図的過量投与が本剤群で1例、プラセボ群でも0例という形で、自殺企図がそれぞれ2例、若しくは1例ということで、いずれも5,000例若しくは2,000例の中の1例、若しくは0例や2例ですので、非常に低い発現率であって、この薬に関しては、自殺のリスクに関しては高いものではないと判断しています。

○野田委員 どうもありがとうございました。二点目を確認させていただきたいのですが、添付文書案の、この薬剤の適応ですが、BMIが25以上で、かつ2型糖尿病があって、かつ脂質代謝異常がある場合に使えるという薬ですね。それからもう一つは、「内臓脂肪蓄積を伴い」という所の下の囲みの中を拝見しますと、「可能な限りCTにより確認した上で」と書いてありますが、可能な限りというのは、どの程度確認すべきなのか。腹囲だけとか、その辺りのニュアンスを教えていただきたいのですが。

○機構 その点は、専門協議の中でも御議論いただいたところですので、川上先生の方からも補足があれば、後でしていただければと思います。我々の最近出されています日本肥満学会からの肥満症治療ガイドラインの中でも、CTを可能な限り撮るということが推奨されています。現実問題として、すべてのケースにおいてCTを義務付ける必要があるのかということに関して議論した場合に、必ずしもそうではなくて、治療歴であり、あるいは腹囲でありといったものでも、十分確認できる。ですから、今回の効能・効果の中で一つの因子としてとらえていますので、先生がおっしゃったようにBMI25以上、かつ2
型糖尿病、かつ脂質代謝異常の肥満症で、しかも内臓脂肪蓄積を伴っていると。ですから、幾つかのファクターのあるうちの一つとして、我々としてはできる施設あるいはできる状況ではCTを撮っていただきたいのですが、それを必ずしも要求事項というか、それがないと始められないというところまで縛る必要はないのではないかというようなことで、このような書き振りにさせていただいた経緯があります。

○松井部会長 必須ではないということでしょうか。

○野田委員 つまり、肥満学会のガイドラインにのっとっての可能な限りという理解でよろしいですね。どうもありがとうございました。

○松井部会長 ほかに御意見はありますか。

○成冨委員 マキシマムの投与期間は特に設けられていないようですが、例えば最初はB��I25%を少し超していて、これを飲んでいるうちにどんどん痩せてきて、それでもずっと飲み続ける人がいるかもしれませんが、どこかでやめなければいけないというものはないのか。あるいは、やめた後にリバウンドがこないのか、その辺りの問題はどうでしょうか。

○機構 添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」を御覧ください。本剤に関しても、この薬に関してどこまで飲ませるかに関しては、専門協議でも議論させていただきました。その中で、「用法・用量に関連する使用上の注意」のところで書かせていただいているのですが、まず3か月の時点で少なくとも投与前から、基準にのっとって5%の減少が認められなければ、継続投与の妥当性を判断すると。その後に、6か月で効きが悪ければ、投与中止を検討すると。それから3番にありますように、投与開始1年をめどにして、一応この薬から離れる、若しくは離脱できるようなところで、適切な生活習慣を確立
した上でやめていただくということを、この中では書かせていただいております。ただ、実際には臨床の現場の中で、この薬がどうしても1年で絶対に切れるかというと切れない場合も多分あるだろうということで、まずはきちんとした目標、めどを立てて、その中で薬を切れるような環境を作っていくことが大事であろうということで、用法・用量に関連する使用上の注意に書かせていただいているところです。

 海外の方では、一応2年まで使ったようなデータは確かにあるのですが、国内の臨床試験では1年までです。

○松井部会長 リバウンドのことについては、いかがでしょうか。

○機構 この薬ですが、添付文書の5ページの臨床成績の項を見ていただけると分かるのですが、体重変化率の経時推移があります。5ページの右の下の図です。ここで52週以降、3か月間フォローアップを取っているのですが、これで見ていただくと分かりますように、この薬をやめると、体重が落ちた患者がその後のフォローアップで戻ってきます。実際にはリバウンドというか、元に戻るぐらいまでは戻ってくるのかなというところが、この結果から読み取れるようになっています。

○松井部会長 いかがですか。

○川上参考人 この種の薬の一番の問題でして、我々の使い方としては、まず減量することによって食事療法あるいは運動療法等々をより行いやすくすることによって、減量によって生活習慣の改善療法というものが、より遵守できるようになることを期待して使うのが現場だと思います。ですから、この薬だけで生活習慣を改善できない場合は元へ戻ってしまいますので、そういう意味での現場での使用法としては、非常に注意が必要だと思います。これは、先ほど申し上げました外科療法でも同じで、もともとそういうことが動機として守れないような方には、外科療法を行ってもやはり元に戻るということになってお
りますので、最初に使い始める適応については、現場ではかなり注意しながら使うと思います。

○松井部会長 成冨先生、よろしいですか。ほかに御意見はありますか。

○清水委員 川上先生に教えていただきたいのですが、今の話に出ましたが、長期投与になってしまう可能性は、先生はどのようにお考えになりますでしょうか。

○川上参考人 これは、先ほど事務局の方からも御案内がありましたが、かなり使う医師の理解が十分にないと、先生が御指摘のようなことがあり得ると思います。いわゆる依存症とは違いますが、使っていた方が現場としては楽です。ですから、使用する医師の啓蒙は同時に行うということも条件の中に入っていると思いますが、それは是非必要なことだと考えています。

○清水委員 そういったことを考えますと、投与日数が発売後1年を経過した後の話にはなりますが、処方日数の制限や定期的な検査を義務付けるというようなことで、何か少し抑制になることを考えることも必要かなと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○川上参考人 少なくとも1年を超える場合は、理由書というものが必要になると考えています。どのような縛りをするかは、今ここで判断できることではありませんが、御指摘のように正当なる理由があることを第三者が認めるような審査が必要であるとは思います。ただ、全く現在のマジンドールを使えないということでして、これはかなり専門家の間で使った方がいいと思われる状況でも使えないという意味で縛ってしまうことは、現場としては困るということですので、全く可能性を無くしてしまうということは避けていただきたいというのが、私どもの考えです。全く野放図にしておいていいということでもな
いと思います。

○清水委員 私が1年を過ぎた後とお話したのは、通常1年を過ぎるといわゆる処方の上での長期投与が可能になってくる。新薬の間には2週間ずつ処方しなければいけない。そうすると、そこにある程度たがが掛かってくるのですが、そこで長期投与が可能になってしまうと、その辺りのところがルーズになる可能性があるという意味で、質問させていただきました。

○松井部会長 この辺りの制限をすることは、技術的に可能なのでしょうか。

○審査管理課長 処方せんの期間は、保険の考え方でやっていると思いますので、先生から御指摘のあった、御意見があったことについては、お伝えさせていただくということで対応させていただきたいと思います。

○機構 事務局から追加をさせていただきます。まず、先生が御指摘の点は我々も非常に重要だと考えています。一つは、今、川上先生からもありました使用する医師への啓発活動です。例えば、そのような本剤のリスクやベネフィットを解説した適正使用ガイドというものを今用意しています。この治療を始める前に、この薬を使い続けることそのものが治療ではなくて、やはり使って体重を落としていただいて、いかに患者が適切な生活習慣を確立するか、そのためのツールなのだということをきちんと説明しながらやっていただく。それから、先ほど添付文書を事務局から御説明したように、一応1年に目標を設定して、それまでにきちんと確立できるような目標を立てながら治療に挑んでいただくことが一つです。

 それから、今計画しています製剤の販売後調査の中で1年を超えるような場合には、なぜ1年以上の投与が必要であるのかといった理由も含めて、調査をする予定にしています。そこで、1年を超えるような症例が多数認められた場合には、やはりその症例の必要性なり安全性なりについては、我々事務局としても十分にフォローしていきたいと考えています。

○松井部会長 ありがとうございます。大事な点だと思います。ほかに御質問、御意見等ありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。川上参考人、どうもありがとうございました。失礼ですが、御退席ください。

── 川上参考人退席 ──

○松井部会長 なお、永井委員、野田委員、林委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。



2009/09/29 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 議事録



○望月分科会長 委員の方々から御意見、御質問等があればお願いいたします。

○宗林委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□
□。□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
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□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□。

○望月分科会長 □□□□□□□□□□□□□。

○事務局 □□□□□□□、□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□。□□、□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□。
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○宗林委員 □□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
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○機構 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□
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○宗林委員 □□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□、□□□
□□□□□□□□□□□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□、□□□□□□□□
□□□□「□□□□□□□□□□□□□□□□」□□□□□□□□□□□□□□□□□。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○機構 □□□□□□□□□□□□。「□□□□□□□□□□」□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□。□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□。

○望月分科会長 □□□□□□□□。

○笠貫委員 □□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□、□□、□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□、
□□□□□「□□□□□□□□□□□□□」□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
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○機構 □□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
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□□□□□□□□□□□□□。□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□
□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
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□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
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○笠貫委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
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□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○機構 □□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□、□、□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□
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□□□□□□□、□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○望月分科会長 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□
□□□□□。

○審査管理課長 □□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□、□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□、□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○望月分科会長 □□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□。

○審査管理課長 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□
□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○笠貫委員 □□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。「□□□□□□□□□□」□□□□□□
□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□。

○望月分科会長 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○機構 □□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□
□□・□□□、□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、「□□□□
□□□□□」□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□、□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○宗林委員 □□、□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□
□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□、□□□□、□□□□
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□□□□□□□□□□□□、□□□□・□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□
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○山口分科会長代理 □□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□、
□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□、□□□□□□□□□□□
□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
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□□□□□□□。

○機構 □□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□、□□□□□・□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
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□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□、□□□□□、□□□□□□、□□、□□□□・□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□・□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○笠貫委員 □□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□。□□□、□□□□□□、
□□□□□□□、□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□、□□□□□□。□□□□□□□□□□□□
□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。

○機構 □□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□、□□□□、□
□□□□□□□□□□□□・□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□、□□□、□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□。
 □□□、□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□、□□□□□□□□
□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□
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□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□。

○飯島委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□
□、□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□。

○審査管理課長 分かりました。いろいろと先生方に御指摘いただいています。この薬剤を使うに当たりどういう縛りにするかというところの御議論かと思いますので、それについては、また整理させていただいて、御報告させていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

○松本委員 □□□□□□□・□□、□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□、□□□□□□
□□□□□、□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□。

○望月分科会長 以上に基づいて、検討していただき、報告いただくということでよろしいでしょうか。

○神山委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□。

○望月分科会長 よろしくお願いします。それでは、資料10については、今申し上げた
ような処置をさせていただきたいと思います。



平成21年11月27日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録



○松井部会長 次は、最後の議題ですね。「その他」の議題1を御説明ください。

○事務局 資料18-2に基づいて御説明します。本日配らせていただいた1枚紙の資料になります。「医薬品オベスケアカプセル10mg及び同カプセル15mgの対応について」、です。まず、本日この「その他」の議題として報告させていただくこととなった経緯について簡単に御説明したいと思います。平成21年7月24日開催の本部会において既に御審議いただいている品目ですが、その後、9月29日に開催された薬事分科会において、□□
□□□□□□□□□□□を再整理することとされました。□□□□□□□□、□□□□□
□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□
□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□、□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、これについて報告させていただくということになりました。2番以降、詳細な説明について機構の方から御説明をお願いしたいと思います。

○機構 手短にご説明します。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□・□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□、□□□□□
□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□
□□□、□□□□□□・□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□
□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□。□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□
□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□
□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□
□□□□□□□、□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□、□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□、□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□
□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□(□)□□、□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□
□、□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□・□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□、本剤の取扱いについてさらに検討をしたいと考えておりますので、本日はその現状を報告させていただいたということです。

○松井部会長 ありがとうございました。御質疑はありませんでしょうか。ありませんか。それでは本事項については先生方の確認をいただいたものといたします。



うーん。アラン・ポーの小説に出てくる天才でも、この暗号は解けないでしょう。







2010年4月17日土曜日

DPP-IV阻害剤とSU剤の関係

日本糖尿病協会がインクレチン薬とSU薬の適正使用に関する医療従事者向けのリコメンデーションを発表しました。09年12月にシタグリプチンが発売されて以来、SU剤服用者に追加投与して重篤な低血糖による意識障害が起きたという報告が後を絶たないため、原因と対策を検討して公表したもので、高齢者や軽度腎機能低下者にSU剤を使う時は極めて慎重であるべき、そして、SU剤にインクレチン薬を追加する時はSU剤の減量が好ましい、などの点を指摘しています。


日本糖尿病協会:【医療従事者向け】「インクレチンとSU薬の適正使用について」


日本の臨床試験では重篤な低血糖は発生していないとのことですが、これは海外も同じで、私も違和感があります。具体的な症例や症例数は把握していませんが、次の二点が影響しているかもしれないので、一言書いておきましょう。事実に反しているかもしれない点はご了承ください。


第一は、インクレチン薬は低血糖を起こしにくいという油断。シタグリプチンはDPP-IV阻害剤で、内臓ホルモンであるGLP-1がDPP-IV酵素によって不活化されるのを防ぎます。GLP-1は血糖値の高い時だけインスリンの分泌を刺激するのでSU剤と違って低血糖を招きにくいのです。GLP-1は1-2分で不活化されてしまいますが、DPP-IV阻害剤を使えば作用を長期化することができます。


尚、GLP-1はこの他に食物が胃から腸に移行するのを遅らせたり、肝臓のグルカゴン異常分泌を抑制したり、食欲を抑制したりする作用を持っていますが、DPP-IV阻害剤はグルカゴン分泌抑制だけのようです。胃腸影響が小さい代わりに、GLP-1作用剤ほど悪心・嘔吐が発生しません。食欲抑制作用が小さいのは悪心・嘔吐が少ないせいかもしれませんが、食欲を抑制する内臓ホルモンであるPYYの活性化にDPP-IVが関与していることと関係があるのかもしれません。DPP-IV阻害剤のGLP-1増強作用がPYY抑制作用で相殺されてしまうという考え方です。


血糖降下薬はメトフォルミンの悪心・胃腸副作用、グリタゾンの体液貯留・浮腫のような特徴的な副作用を持っていますが、DPP-IV阻害剤は目立った副作用がないのが特徴です。弱点は効果が弱めなことで、このため、海外では併用で使われることが多いようです。ところが、DPP-IV阻害剤は他の血糖降下薬の副作用を増強してしまう傾向があるので注意が必要です。中でもSU剤は、臨床試験でも低血糖の発生率が数ポイント高まります。リラグルチドのようなGLP-1作用剤をSU剤と併用する時は、リスクがもっと高まります。


海外ではメトフォルミンが第一選択薬なので、DPP-IV阻害剤もこの併用が一番多いです。メルクの研究によるとメトフォルミンはGLP-1の分泌を促進する作用を持っているので、シナジーがあるかもしれません。メトフォルミンはインスリン感受性を改善する作用も持っていますので、この組み合わせは補完性があり、インスリン分泌刺激剤同士の併用よりも筋が通っています。


第二の陥穽は、臨床試験のデザインがあまり良くなかったのかもしれません。臨床試験の組入れ条件・除外条件は現実の医療とできるだけ近付けるのが理想ですが、医療倫理の問題があるため、副作用を受けやすそうな患者などは除外されることになりがちです。シタグリプチンの試験で言えば、インスリンやSU剤に追加した試験は他の薬に追加した試験や単剤投与試験よりも被験者の治験開始前の平均HbA1cが高めになっています。おそらく、低血糖リスクを懸念したのでしょう。


海外の、インスリンに追加した試験ではベースライン値が8.7%で、100mgを一日一回投与(海外の標準用法)した群は平均0.6%低下しました。ADAの血糖管理目標である7%未満を達成した患者の比率は12.8%でプラセボ群の5.1%を上回りましたが、大半の患者は日本で言う管理不良だったことになります。SU剤(グリメピリドを一日4mg以上)に追加した試験では8.3%から0.45%低下しましたが、7%未満達成率は17.1%(プラセボ4.8%)で、この試験でも管理不良が多かったのです。


日本の試験も同じで、グリメピリドに追加した試験のHbA1cは平均8.2%から7.5%に低下しただけでした。因みに、単剤投与試験のベースライン値は7.6%、ボグリボーズ対照単剤投与試験は7.7%、ピオグリタゾンに追加した試験は7.7%、メトフォルミンに追加した試験は7.8%となっていて、結局、8%を超えていたのはSU剤併用試験だけでした。


海外の臨床試験では副次的評価項目として7%未満達成率も検討するのが一般的です。医療従事者にグラフを見せて、「ウチの新薬を使えば先生の患者さんも血糖管理目標を達成できるかもしれませんよ」とアピールするのです。被験者の血糖値が高すぎると良い数値が出ないので、普通は7%台のあと一歩で達成できる患者を多数組み入れます。ところが、シタグリプチンのインスリン・SU剤併用試験は数値が低すぎて、宣伝どころか効果が弱い印象を与えてしまいます。それでも高めの患者を組み入れざるを得なかったのは被験者を過度な低血糖リスクに曝したくなかったからでしょう。


しかし、現実の医療でシタグリプチンを使う患者さんのHbA1cはあまり高くない人が多いのではないでしょうか。高い人はもっと強力な薬が必要だからです。7%台のSU剤服用者にシタグリプチンを投与すれば、臨床試験より低血糖が多く発生しても不思議はありません。


ノバルティスのビルダグリプチンの海外SU剤併用試験は、50mg一日一回でも二回投与しても効果は同じでした。このため欧州ではSU剤併用時に限って一日一回に制限されています。欧米で承認されているサクサグリプチン(日本は大塚製薬が開発)の試験では、SU剤の用量を半分に減らした上でサクサグリプチンを追加投与し、治験開始前と同じ量のSU剤を継続服用した群と比較しました。薬によって違うのかもしれませんが、DPP-IV阻害剤をSU剤と併用する場合は注意が必要であることを示しています。


さて、DPP-IV阻害剤は目立った副作用はないのですが副作用がないわけではなく、感染症など様々な事象の発生率が少しずつ高まります。また、長期試験の結果が出るのはまだまだ先なので、他の薬ほどの長期的な安全性の裏付けはありません。DPP-IVの作用や治験成績から注意すべきなのは以下の点でしょう。



  • DPP-ⅣはサブスタンスPの不活性化にも関与しているので、蕁麻疹や血管浮腫(特にACE阻害剤同時使用時)に注意。気管支収縮や粘液分泌、炎症反応にも関与している可能性があるので、気管支炎や上部気道感染症もリスクが高まるかもしれない。

  • DPP-ⅣはTセルなどの表面分子、CD26と類似しているので、阻害すると免疫力が低下するかもしれない。

  • 前臨床で皮膚毒性が見られた薬もある。スティーブンス・ジョンソン症候群のリスクがあるかも知れない。

  • 血清クレアチニンが上昇することがあるので腎機能低下に注意(シタグリプチンもビルダグリプチンも武田薬品のアログリプチンも専ら腎で排泄)。


以上、何かの参考になれば幸いです。







2010年4月3日土曜日

NAVIGATOR試験の回顧

ACC心臓学会でNAVIGATOR試験の結果が発表されました。二型糖尿病予防試験はこれまでにもありましたが、NAVIGATORは単に血糖値が一定水準を上回るかどうかを調べるだけでなく、心筋梗塞のような臨床的な転帰も検討した点で非常に意義があります。結果は意外なもので、nateglinide(スターシス、ファスティック)は心血管イベントを防げなかっただけでなく、糖尿病の予防にも役立ちませんでした。valsartan(ディオバン)は小さな糖尿病予防効果を示しましたが、心血管イベントを防げませんでした。この試験は二型糖尿病予備群が対象ですが、患者背景を見ると高血圧患者やメタボリック・シンドロームの患者が多く、その意味では、典型的な初発予防試験と考えることもできます。valsartanはなぜ転帰を変えることができなかったのか?今回は、データをやや詳しく見てみましょう。

NAVIGATOR試験は日本を含む40カ国の806施設が9000人以上を組入れて5年以上追跡した大規模試験です。nateglinideとvalsartanを一度に調べた2x2ファクトリアル・デザインです。

nateglinide偽薬合計
valsartan2,3162,3154,631
偽薬2,3292,3464,675
合計4,6454,661

NAVIGATOR試験のデザイン

  • デザイン:無作為化割付、偽薬対照、二重盲検。
  • 患者:耐糖能異常(IGT)且つ空腹時血糖値(FPG)≧5.3mmol/L(95mg/dL)、且つ50歳以上で心血管疾患既往又は55歳以上で心血管リスク因子を一つ以上持つ人。
  • 患者背景:平均64歳、女性が51%、白人/黒人/アジア人/その他の比率83/2/7/8%。平均体重84kg、BMI 30kg/m2、血圧139/82mmHg、FPG 6.1mmol/L、LDL-C 126mg/dL、TG 150mg/dL、 HDL-C 50mg/dL。心血管疾患既往24%、高血圧症77%、高脂血症(高non-HDL-C値)45%、メタボリックシンドローム84%。同時使用薬はベータブロッカー39%、カルシウムチャネルブロッカー32%、利尿剤32%、コレステロール治療薬38%、アスピリン37%。
  • 介入方法:valsartan試験は160mgを一日一回経口投与(最初の2週間は80mg)。nateglinide試験は60mgを毎食前経口投与(最初の2週間は20mg)。
  • 対照群:偽薬。尚、両群とも強めな生活習慣改善指導を受けた。
  • 主評価項目:三種類設定。糖尿病発症リスク、コア心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全入院)、拡張心血管イベント(コア心血管イベントに加えて動脈再開通術や不安定狭心症による入院)。心血管イベントは第三者がアジュディケーション。
  • 解析計画:糖尿病予防はvalsartanが18%、nateglinideが25%削減を前提に99%以上とオーバーパワー。心血管イベント削減効果はコアが784イベント発生とリスク削減率18%を前提に74%、拡張心血管イベントは1374イベント、12%前提に64%(治験中に見直された後の計画)。主評価項目が複数あることや中間解析を行うことからp値の要求水準を低く設定(具体的な内容は不明)。
  • 解析対象:9306人。治験実施基準違反で閉鎖された10施設の212人を割付後に除外した。

Valsartan試験の結果

  • valsartanとnateglinideの間に交絡はなし(2x2ファクトリアルの試験は交絡があると個々の試験の解析が無効になる)。
  • 5年後服薬率:67%(偽薬群は66%)
  • 糖尿病発症:有意に少ない。発生率33.1%、偽薬群36.8%、HR0.86、95%信頼区間0.80-0.92、p<0.001。
  • コア心血管イベント:偽薬並み。両群8.1%、HR0.99。0.86-1.14。
  • 拡張心血管イベント:偽薬並み。14.5%対14.8%、HR0.96、0.86-1.07。
  • その他の観察事項:valsartan群は偽薬群と比べて、血圧が有意に低く(差は平均2.8/1.4mmHg、p<0.001)、FGPと2時間食後血糖値が有意に低く(0.03mmolと0.17mmol、p<0.01)、低血圧性有害事象は有意に多いが高血圧性のものは有意に少ない。
  • 主要降圧剤の服用状況:治験開始時は一人平均1.2種類。最終観察時点ではvalsartan群1.3種類(及びvalsartan)、偽薬群1.5種類。

血圧はlower is betterではない?

興味深いのは糖尿病関係の成績が良かったことです。同じような患者を対象にしたDREAM試験では、ramiprilの糖尿病予防効果は有意ではありませんでした。ARBがACE阻害剤にできなかったことを達成したのは初めてかもしれません。とは言え、リスク削減率は14%でramiprilは9%ですから差は小さく、信頼区間もかなり重なっています。それに、糖尿病の発症を1年程度遅らせることにどの程度の意味があるのかも良く分かりません。心血管イベントには効果の欠片も見られなかったからです。小血管性合併症の発生状況を調べれば効果があったかもしれませんが、仮定の話です。糖尿病になったら合併症防止効果が曖昧なvalsartanではなく糖尿病薬を服用することになるのでしょうから、それまでの一時期だけvalsartanを服用する明確なメリットが欲しいところです。

心血管イベントはなぜ減らなかったのでしょうか?論文著者はこのように推測しています。

  • 過去のARBの試験と比べて被験者の元々の心血管リスクが低かった(初発予防が4分の3と多く、有益な薬を同時使用していた人が多く、また、生活改善指導の内容が充実していたため更に削減する余地が元々小さかった)。
  • 偽薬群の2割程度が期中のACE阻害剤やARBの服用を開始し、valsartan群は3割以上が服用を止めてしまったため効果が希薄化された。
  • valsartanの用量用法が至適ではなかった可能性(Val-HeFT心不全試験もVALIANT心機能低下併発急性心筋梗塞試験も160mgを一日二回投与した・・・海外では高血圧治療でも一日320mgまで承認されている)。

投与頻度の問題は思い当たる節があり、これらの試験の結果が発表された時も一日二回に分けて服用したほうが良いのかなと思いました。只、作用時間の長いtelmisartanのアウトカム試験も今一つでしたので、今ではlonger is betterだとは思っていません。用量については、amlodipineと直接比較したVALUE試験で最初の6ヶ月間の降圧やイベント発生率が見劣りした時も、一日160mgでは足りないのかなと感じました(VALUE試験が始まった頃は320mgは承認されていなかった)。NAVIGATORも降圧が足りなかった可能性はあるかもしれません。

しかし、今回のACCで発表されたACCORD血圧試験も似たような結果でした。二型糖尿病患者の血圧を強化治療(目標120mmHg未満)しても心血管疾患イベント数は標準治療(140mmHg未満)と有意差がありませんでした。治験開始時の平均値は139/75mmHgなので最大血圧はNAVIGATORと同じです。最初の一年間の平均群間差が14/6mmHgもあったのに有意水準に達しなかったのですから、4/2mmHg程度の差しかなかったNAVIGATOR試験で偽薬並みだったのは当然のことかもしれません。

今回の学会でも、降圧にはJカーブがあって下げ過ぎると却ってリスクが高まるおそれがあるという発表がありました。ESCの高血圧治療ガイドラインは単純高血圧の血圧目標を140/90mmHgとしていますので、NAVIGATOR試験の患者の血圧管理は初めから良好だったことになります。このような患者に更に降圧しても意味がないのかもしれません。NAVIGATORもACCORD血圧試験も、心血管イベントが増えなかったことを喜ぶべきなのかもしれません。

Nateglinide試験

糖尿病を予防できず、心血管イベントも減らず、低血糖や有害事象による治験離脱が有意に多いという散々な結果になりました。血糖治療薬を予防に転用した試験は成功が続いたのですが、metformin、アルファ・グルコシダーゼ阻害剤、グリタゾンは何れも膵臓に作用してインスリン分泌を促す薬ではありません。治験論文の論評によると、SU剤の予防試験は成功しなかったとのことです。だとしたら、nateglinideに予防効果がなくても不思議はないのかもしれません。metforminとrosiglitazone、pioglitazoneは長期試験で血糖治療作用がSU剤より長く続くことが明らかになりました。予防試験のような長期間の試験に適していることになります。

この試験の最大の謎は、空腹時血糖値は偽薬群より低く推移したのに、2時間食後血糖値が最初から最後まで偽薬群より高かったことです。論文著者は、検査当日の朝はnateglinideを服用しないプロトコルだったのでリバウンドしたのではないかと推測しています。別の試験でも同じ現象が観察されているようです。まあ、この点には目を瞑るとしても、血糖治療薬を用いた予防試験がフェールしたということは、長期的な血糖管理にフェールしたということです。本来の用途における有効性を心許無く感じませんか。

この試験はメタボ系の人が多く、もし成功していたら今頃は、『メタボリック・シンドロームに対する薬物療法の意義を示した最初のエビデンス』と囃されいるかもしれません。裏返して考えると、NAVIGATOR試験は、『高血圧症なら治療するがメタボだからといって特別にそれ以上の降圧・血糖治療をする必要はないことを示すエビデンス』なのかもしれません。

Valsartanは名古屋では引き分けに

次は、同じくACCのLate-breakerで発表されたNagoya Heart Study(NHS)です。試験の内容や結果は納得できるものですが、分からないのは、Kyoto Heart StudyやJikei Heart Studyとの関係です。この二本の試験ではvalsart...