2009年4月26日日曜日

アメリカでブタインフルエンザの人への感染が報じられた時は、それほど心配しませんでした。人から人への感染があったものの規模は小さく、1週間程度で治癒するなど病原性も深刻とは思えなかったからです。それだけに、メキシコで大量の感染者・死亡者が出たという報道は驚きました。幾つか調べてみましたが、現在調査中とのことで、事実関係は良く分かりません。少なくとも一部は、アメリカで散発的に報告されたウイルスと類似しているようですので、両国だけでなくあちこちで同様なウイルスがブタの間で流行っているのかもしれません。


現実に何十人もの使者が出ているのですから、原因がブタインフルエンザであっても他の感染症であっても大変な事態であることは間違いありません。WHOや米加の協力で、一刻も早く実情把握が望まれます。


情報が限られていて良く分からないので、以下、WHOが4月25日に出したFAQ集と、アメリカのCDC疾病管理予防センターがアメリカ人向けに出した推奨を、ほぼそのまま翻訳しました。



ブタインフルエンザ frequently asked questions(WHO、09年4月25日)


(原文のpdfファイルは、このウェブサイトにあります。)


ブタインフルエンザとは何ですか?


ブタインフルエンザは強い感染力を持つブタの急性呼吸器疾患で、数種類のブタインフルエンザA型ウイルスの一つが起こします。モービディテー(症状の重さや合併症)は高いことが多く、死亡率は1-4%です。空気感染や直接間接接触で感染が広がり、キャリアでも症状がない場合があります。流行は一年中起きますが秋と冬に増加します。多くの国がブタにインフルエンザワクチンを投与しています。


ウイルスの亜型はH1N1型が多いですが、H1N2、H3N1、H3N2なども循環します。ブタは鳥や人のインフルエンザウイルスに感染することもあり、ブタH3N2ウイルスは人から感染したものと考えられています。複数のウイルスに感染すると、ウイルスの遺伝子が混合しreassortantウイルスが生まれる可能性が生じます。ブタのウイルスは通常はブタにしか感染しませんが、種を超えて人などに病気を起こすこともあります。


人間の健康に与える影響は?


ブタインフルエンザが人に感染して流行・散発することが時々あります。臨床症状は季節性インフルエンザと類似していますが、症状がないもあれば重い致死的な肺炎例もあり様々です。


感染例の多くは季節性インフルエンザ監視体制の中で発見されています。軽症・無症候例は見過ごされている可能性があり、実際にどれ位の感染例があるのかは分かりません。


どこで発生しているのですか?


世界的な疫病監視体制であるIHRが2007年に実施されて以来、WHOはアメリカ連邦とスペインからブタインフルエンザ症例の報告を受けています。


どのようにして感染するのですか?


通常はブタインフルエンザに感染したブタから感染するのですが、ブタとの接触がなかったりブタがいない地域で発症した症例もあります。幾つかの症例では人から人への感染でしたが、密接な接触のある閉ざされた集団の人々に限定されています。


豚肉やブタ製品を食べても安全ですか?


はい。適切に処理された豚肉やブタ由来の製品を食べることによってインフルエンザウイルスが感染することは示されていません。一般的な豚肉の調理ガイダンスに従って70度の熱で調理すればブタインフルエンザウイルスは死亡します。


どの国のブタで流行していますか?


ブタインフルエンザは動物の病気を監視する国際機関であるOIEに報告されないので分かりません。流行が見られたのはアメリカ合衆国、北南米、欧州(英国、スエーデン、イタリアを含む)、アフリカ(ケニア)、そして中国や日本など東アジアの一部です。


大流行のリスクはありますか?


ブタと接触することが多い人以外は殆どの人がブタインフルエンザの感染予防に必要な免疫を持っていないでしょう。もしブタウイルスが人から人に効率よく感染する能力を確立した場合、インフルエンザの大流行が起き得ます。影響を予想するのは困難で、そのウイルスの病原性や人々が既に持っている免疫、季節性インフルエンザ感染によって生じた抗体の交差保護、感染者の特性などによって異なります。ブタインフルエンザが人のインフルエンザと混合してハイブリッド化して大流行を起こす可能性もあります。


人が接種できるブタインフルエンザ・ワクチンはありますか?


ありません。インフルエンザは極めて短時間で変化します。ワクチンに配合されている亜型と循環している亜型がうまくマッチしないと十分な免疫が得られません。WHOはワクチンに配合すべき亜型を毎年、推奨していますが、今シーズンの推奨にはブタインフルエンザウイルスは含まれていません。現在アメリカ合衆国やメキシコで発生しているブタインフルエンザに交差保護があるかどうかは現在調査中です。


治療薬はありますか?


国によっては季節性インフルエンザの抗ウイルス薬があり、予防・治療に効果があります。adamantane(amantadineとremantadine)とノイラミニダーゼ阻害剤(oseltamivirとzanamivir)の二種類があります。


過去に報告されたブタインフルエンザ症例は、治療や抗インフルエンザ薬の投与なしで完全に回復しています。


一部のインフルエンザウイルスは抗ウイルス剤に抵抗性を持っています。アメリカ合衆国の最近の症例から取得したウイルスはamantadineやremantadineには抵抗性がありましたがoseltamivirやzanamivirには感受しました。


ブタインフルエンザの予防や治療に抗ウイルス剤を用いるべきかどうか推奨することは、情報が限られているため、できません。医療従事者は臨床的・疫学的評価や個々の患者の予防・治療による利益や害に基づいて判断しなければなりません。現在ブタインフルエンザ感染が流行しているアメリカ合衆国とメキシコの政府は、oseltamivirやzanamivirを治療や予防に用いることを推奨しています。



CDCのアドバイス


CDC(アメリカの疾病管理センター)の4月26日現在の推奨は、以下の通りです。(原文のリンク



  • 現時点では、旅行を控えるよう推奨はしない

  • カリフォルニアやテキサスのようにブタインフルエンザ感染が発見された地域に旅行する場合は、関連機関の最新の情報を確認し、季節性インフルエンザワクチンなどルーチンに接種しているワクチンの接種状況を確認し、訪問先の地域の医療施設などを特定すること。

  • 訪問中は、地方公共団体の発表に注意し、移動制限や予防推奨などに従うこと。

  • 更に、石鹸と水による手洗いを行い感染の拡大を防ぐこと。石鹸がなく手が汚れていない場合はアルコールベースのハンド・ジェル(アルコール含有60%以上)を用いる。

  • 咳やくしゃみをする時はティッシューで口や鼻を覆うこと。使ったらゴミ箱に捨てること。ティッシューがない場合は、手で覆うのではなく上腕の袖で覆うこと。咳・くしゃみの後は手を洗うこと。

  • 地方公共団体の推奨に従うこと(例えば、手術用のマスクの装着)。

  • 熱や咳などの症状が出たら直ぐに治療を受けること。病人や動物に接触したかどうかを医師に伝えること。

  • 予防策を講じたい場合:季節性インフルエンザワクチンはブタインフルエンザに効果があるとは期待できないので、CDCは、処方薬(TamifluとRelenza)による治療・予防を推奨する。何れの薬とも、ブタウイルスが体内で増殖しないよう戦い、症状を軽快したり、回復を早めたりすることができる。重大な合併症を防ぐ効果もある。治療は病気になってから二日以内に開始するのが一番良く効く。医師と相談して決めるべき。

  • 病気になったら症状がなくなるまで旅行は中止する(医者に行く場合を除く)。

  • 旅行から帰ったら、7日間は健康状態を注視する。発熱・咳などの症状が発生したら医者に行って、症状、旅行地、病人や農場動物との接触の有無を伝える。



1 件のコメント:

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    参考になりました。ありがとうございます。

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