二型糖尿病患者の血糖値を正常値近くまで引き下げる集中治療法は、現在の標準的な治療法と比べて良いのか悪いのか?検証するために実施されたアメリカのACCORD試験はむしろ有害という意外な結果になりましたが、オーストラリアなどで実施されたADVANCE試験では特に問題は生じませんでした。なぜ違う結果になったのか?そもそも、ADVANCE試験は主目的(糖尿病性合併症の抑制)を達成できたのか?詳細が公表されていない現段階では、分からないことだらけです。
この二本の試験の結果は、6月にADA(アメリカの糖尿病学会)で発表されるようです。ADAのプログラム(先行版・・・pdfファイルです)を読むと、ACCORD試験の結果発表はアメリカの6月10日、ADVANCE試験は6月6日にコマが確保されています。また、同様な目的で実施されたVADT試験についても、何らかの発表が6月8日に予定されている模様です。あと3ヶ月の辛抱ということになります。
それにしても、いつも思うのですが、どうして学会発表を待たないといけないのですかね。論文だけならもっと早く刊行できるのではないでしょうか。学会側が発表当日まで情報公開を禁じるのは、研究成果を医療にフィードバックする場として最適なのは学会発表であり、事前に研究者・企業が記者発表して信頼性・客観性に欠ける情報を提供するのは有害、という考え方のようです。しかし、今回のような、あるいはENHANCE試験のような、医師や患者にとって今すぐ必要な情報がタイムリーに提供されないのでは本末転倒ではないでしょうか。査読誌に論文発表するくらい大目に見てもらえないものですかね。
2008年3月22日土曜日
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