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prasugrelは2C19多型の影響を受けないようです。論文著者がprasugrelに言及しなかったのは、多型スタディの対象となったサブポピュレーションのclopidogrel群のイベント発生率が全clopidogrel群の発生率よりかなり低かったため、群間比較に適さないと判断したようです。
prasugrel | clopidogrel | |
---|---|---|
解析対象: | ||
TRITON治験全体 | 6813 | 6795 |
2C19多型サブスタディ | 1455 | 1459 |
うち、機能低下多型キャリア(%) | 28.0 | 27.1 |
ノンキャリア(%) | 72.0 | 72.9 |
主評価項目発生率(%): | ||
治験全体 | 9.9 | 12.1 |
サブスタディ | 9.4 | 9.3 |
うち、機能低下多型キャリア(A) | 8.5 | 12.1 |
ノンキャリア(B) | 9.8 | 8.0 |
Cox比例HR(A対B) | 0.89 | 1.53 |
95%CI | 0.60-1.31 | 1.07-2.19 |
注:主評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的卒中。発生率は15ヵ月間のカプラン・メイヤー推定。HRはハザードレシオ。
出所:Cardiovascular and Renal Drugs Advisory Committee Briefing Document, Eli Lilly
この表のように、clopidogrel群に関しては2C19機能低下多型のキャリアはノンキャリアよりも心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的卒中のリスクが有意に高かったのですが、prasugrel群では有意差はありませんでした。clopidogrelは体内で複数のプロセスを経て活性化されます。prasugrelもプロドラッグですが、プロセス数が少なく、2C19が機能しない患者でも他の酵素で活性化されます。これまでに実施された薬物動態試験でも、ex vivoの血小板凝集阻害試験でも、2C19機能低下多型の影響を受けませんでした。TRITON試験のサブスタディで、臨床的にも影響されないことが確認されました。
prasugrelの弱点は、H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤を服用している胃内pH値が高い患者で、吸収が悪化・遅延することですが、TRITON試験では服用の有無に関わらずclopidogrelより効果が優れていました。TRITON試験はこの薬の薬物動態的な長所が改めて発揮された、と言えるでしょう。
ところで、冒頭に書きましたように、サブスタディ全体の主評価項目発生率はclopidogrel群もprasugrel群も大差ありませんでした。NEJM論文の付属資料にclopidogrel群の患者背景が出ていますが、サブスタディは東欧の施設で組み入れられた患者が64%と、TRITON試験全体の25%と比べてかなり多くなっています。他の点では大差ないので、この違いが何か影響したのかもしれません。両群を見比べると、キャリアはprasugrelのほうが良く、ノンキャリアはclopidogrelのほうが良い、ということになりますが、このような解釈で正しいのかどうかは良く分かりません。
clopidogrelは2C19多型の影響を受けるがprasugrelは大丈夫、という大変重要なデータなのですが、このデータではprasugrelのほうが効果が高そうには見えないので、宣伝には使いにくいのでしょう。偶々、諮問委員会の資料で見つけることができなかったら、prasugrelのデータを知る機会は永遠になかったかもしれません。
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