ヘパリンの不純物混入問題は一段落したかと思っていたら、今度は低分子量ヘパリンの一部ロットがオーストラリアで自主回収になりました。TGAが4月22日に出したリリースによると、サノフィ・アベンティスの低分子量ヘパリンClexane (enoxaparin)の一部バッチから過硫酸化コンドロイチン硫酸が検出されたため、5バッチをリコールしました。
TGAは3月20日にアストラゼネカのヘパリンの一部バッチのリコールを発表しましたが、リリースの中で、低分子ヘパリンの検査も行っていることを明らかにしました。ファイザーの製品(dalteparin)からは検出されず、サノフィ・アベンティスの製品については検査中とのことでした。その後、音沙汰がないので嫌な感じがしていたのですが、予感が当ってしまいました。
Enoxaparin は年商30億ドルを超える大型薬で、在宅治療を含めて様々な用途に使われています。低分子量ヘパリンでは圧倒的なシェアを持っているだけに、今回のリコールがオーストラリアだけで終わるのか、それとも他の地域でも同様な動きが出るのか、気懸かりです。もう一つ引っ掛かるのは、TGAのリリースに、混入が発見された後の対処は国によって異なるという記述があることです。ヘパリンの話なのか、低分子量ヘパリンの話なのか曖昧ですが、もしかしたら、低分子量ヘパリンは混入があっても容認されているのかもしれません。
先日、アメリカや中国など当事国の代表がアメリカで多発した『アレルギー反応』の原因や対策について会議を開いたようです。例によって中国側は、過硫酸化コンドロイチン硫酸が原因とは限らない、多発したのはアメリカだけで他の国では特に増えていないのだからバクスターの製品に固有の原因があるはずだ、と主張しているようです。
一方、FDA側は、in vitro試験で過硫酸化コンドロイチン硫酸が原因であることを突き止めた、と主張しているようです。詳細は論文刊行が予定されている模様ですが、『アレルギー反応』というよりは、レントゲンの造影剤でまれに起きるのと似たような『血圧低下』反応が調停(mediate)されると考えているようです。この反応を惹起するためにはボーラス投与で短時間に大量に投与することが必要で、だから、ボーラス投与が比較的多いアメリカで多発した、ということのようです。
リンク:FDAの記者会見に関するMedPageの記事:意味不明な記述もありますが、記者会見のビデオ(一部のみ)も見ることが出来ます。
バクスターの側でも、過硫酸化コンドロイチン硫酸を混ぜると『低血圧』が起こりうるが、混ぜなければ起きないことをin vitro試験や動物試験で確認したというリリースを出しています。どうでも良いことですが、過硫酸化コンドロイチン硫酸を探知する手法も、今回の実験結果も、FDAとバクスターはお互いに自分が発見したと発表しています。
それはともかく、用法が関係するとなると、もし混入があったとしても、例えば透析時にヘパリンをボーラス投与するのと、安静患者に低分子量ヘパリンを皮下注射するのではリスクが異なるのかもしれません。
低分子量ヘパリンは大丈夫なのか?FDAが何か発表してくれると良いのですが...
2008年4月22日火曜日
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