2008年4月12日土曜日

AVANDIAのVICTORY試験はVICTORYではない


08年のACCアメリカ心臓学会で、Avandia(rosiglitazone)とActos(pioglitazone)のアテローム試験の結果が発表されました。どちらもLate-Breaking Clinical Trialとして発表され、片方は主評価項目を達成できずもう片方は成功と明暗が分かれたのですが、前者の試験は殆ど報道されていません。成功したとか、安全性が示されたとか、断片的な報道が出ているだけです。そこで、今回はこのVICTORY試験を紹介しましょう。

この試験は、過去のCABG冠動脈バイパス術を受けたことのある二型糖尿病患者約200人にAvandia(8mg)または偽薬を投与して、伏在静脈グラフトのアテロームプラクの抑制効果を調べたものです。カナダとスペインで実施され、平均12ヵ月間フォローアップしました。

患者背景は平均年齢65歳、男が92%、二型糖尿病の病歴は8年余、HbA1cは平均6.9%、8割が高血圧を併発し、6割に心筋梗塞歴がありました。CABGを受けてからの経過期間は平均4年弱。7割以上がmetforminを、5割がSU剤を服用していましたが、1割余は経口糖尿病薬を服用していませんでした。尚、インスリンは除外条件でした。抗血小板薬の服用率は100%、ACE阻害剤/ARBやスタチンは約90%、ベータブロッカーが約7割となっています。

結果は、主評価項目である伏在静脈グラフトのプラク量(IVUSで検査)は偽薬群が2.8%増、Avandia群は0.9%増となり、有意差に達しませんでした(p=0.22)。空腹時血糖は各134mg/dLと116mg/dLで有意差がありました。どちらも死亡例は発生せず、心筋梗塞や脳卒中、一時的脳虚血発作は各1対0、1対1、2対0でした。

この試験ではCTで脂肪面積の変化も調べました。Avandia群は皮下脂肪が3割(私がグラフから推定した値)くらい増加し、偽薬群と有意差が出ましたが、内臓脂肪は偽薬と差がありませんでした。体重やHDL-C、アディポネクチンが有意に増加し、スモールLDL-CやCRPが有意に低下しました。

研究者の結論は、Avandiaはグラフト・プラクには中立的だが、様々な代理マーカーに好影響を与える。本試験で有害事象リスクが見られなかったのは安心させる、というものでした。

このような内容なので、VICTORY試験が成功したという報道は間違いです。また、安全性が示されたという報道は間違いではありませんが、言いすぎでしょう。イベント発生数が一人、二人なのですから、どちらの群が多かったとしても、偶然と考えるべきでしょう。そもそも、心筋梗塞などの発生状況は本試験の二次的評価項目だったそうですが、検出力不足が明らかな治験でそのような扱いをするのは不適切なのではないでしょうか。




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