2007年12月30日日曜日

臨床腫瘍学2007年の業績

ASCOが07年の癌研究の主要な成果を発表しました。

Clinical Cancer Advances 2007: Major Research Advances in Cancer Treatment, Prevention, and Screening.

冒頭でASCOのプレジテントが政府が予算を抑制していることに危機感を表明しています。米国の臨床腫瘍学研究は他の国の国民にも恩恵が大きいので、うまく官民協力して克服してもらいたいものです。予算を取るためには成果を宣伝することも重要でしょうから、ASCOに倣ってこのサイトでも取り上げました。それにしても、予算があるから成果が挙がるのか、成果を挙げるから予算が付くのか?我が国もがんばってもらいたいものです。


07年の主要な成果





乳癌のスクリーニングにおけるMRIの役割

  • MRIは乳癌の高リスク患者の診断や、DCIS(非浸潤性乳管癌)の中から浸潤性腫瘍に転じそうなものを見分ける上で、有益であることが判明。

  • 但し、大多数の女性にとってはマンモグラフィーの方が費用、診断の容易さ、偽陽性の少なさなどの点で最適。

HPVと頭頸部癌の関連性

  • ヒト・パピローマ・ウイルスが口腔腫瘍と強く関連していることが判明。子宮頸癌と関連する型のHPVが口腔腫瘍の72%で発見された。

  • ある種の頭頸部癌の調査ではHPV陽性のほうがHPV陰性より予後が良かった。

ホルモン補充療法の減少で乳癌の発症も減少

  • WHIスタディで浸潤性乳癌のリスクが浮上したため、02年以降、エストロゲン・プロゲスチン補充療法の人気が低下した。米国で実施された研究によると、機を一にして乳癌の発生数が大きく減少した。

小細胞性肺癌の予防的放射線療法

  • 末期小細胞性肺癌の患者に予防的頭部放射線療法を行うと脳転移のリスクが3分の1に低下することが判明。早期癌と同様に、末期癌でも予防効果が確認された。

肝癌の余命をsorafenibが向上

  • 癌による死亡の中で世界で3番目に多い肝癌の大規模な試験で、sorafenib(オニックス/バイエルのNexavar)が患者の余命を44%延長。

末期腎癌の治療がbevacizumabで前進

  • インターフェロンにbevacizumab(ジェネンテックのAvastin)を追加すると無憎悪進行期間中央値が5.4ヶ月から10.2ヶ月に増加することが判明。腎細胞腫は過去二年間に続々と新薬が登場したので、今後はこれらの薬の比較や併用を試験することになりそうだ。


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