リンクPotential interaction of Proton Pump Inhibitors (PPIs) with Plavix (clopidogrel) - For Health Professionals
エビデンスが明確であるようには思えませんが、H2ブロッカーという代替的な治療法があるので、敢えて危ない橋を渡る必要はないということなのでしょう。
FDAなど監督官庁がこの問題をどの程度重視しているのかも良く分かりません。今年1月にアメリカで承認されたKapidex(ランソプラゾールというPPIのR異性体を用いた新薬)のレーベルにはclopidogrelとの関係は一言も出ていません。審査文書を読んでも、製薬会社やFDAが検討した形跡はありません。経皮的冠介入術・薬物溶出ステント留置術を施行した後はアスピリンとclopidogrelのdual antiplatelet therapyを最低でも1年続けますが、アメリカでは胃腸潰瘍・出血を予防するためにPPIも処方するケースが多いようです。それだけに、等閑にすべき話ではありません。
ところで、このドクターレターに文献として掲載されているものの中に前回書かなかったものがあったので、追加しておきます。
D Sibbing(ドイツ)
Thromb Haemost. 2009 Apr;101(4):714-9.
- デザイン:PCI・ステント留置後にアスピリンとclopidogrelを服用していて冠動脈造影術を受けた連続1000人の横断観察的試験。三種類のプロトンポンプ阻害剤服用者とそれ以外の患者のADP誘導性血小板凝集をDynabyte社のMultiplateポイントオブケア・インピーダンス凝集計で計測、比較した。
- 結果:PPI服用者は268人で、その内訳はpantoprazole(本邦未発売)162人、omeprazole64人、esomeprazole42人。omeprazole服用者の血小板凝集は295.5 AU*min(四分位範囲193.5-571.2)でPPI非服用者の220.0(143.8-388.8)より有意に高かった(p=0.001)。pantoprazoleは226.0(150.0-401.5)、esomeprazoleは209.0(134.8-384.8)で非服用者と同程度だった(各p=0.69、p=0.88)。
- 結論:PCI後の有害イベントに与える影響を決定するために無作為化臨床試験を行うべき。
Edmund Pezalla
J Am Coll Cardiol, 2008; 52:1038-1039
- デザイン:アメリカの薬品給付管理会社Aetnaの会員データベースの解析。clopidogrelを服用した65歳未満のアドヒランスが良い患者を対象に、その後1年間の保険給付請求を調べ、急性心筋梗塞を示唆する症例を検討した。
- 結果:PPI非服用者(コントロール)は1年心筋梗塞罹患率が1.38%(4800人中66人)、PPI低曝露群は3.08%(712人中22人)、PPI高曝露群は5.03%で、コントロール群と高曝露群の間に有意差があった(p<0.05)。患者背景の偏りを修正するために、虚血性心疾患、鬱血性心不全、高血圧、高脂血症、糖尿病を持つ患者だけを抽出して解析したところ、高曝露群のコントロール群に対する相対リスクは337%で有意差が維持されていた(p<0.05)。
- 結論:保険給付請求データに基づく分析には限界がある。しかし、clopidogrelとPPIの間の潜在的に顕著な相互作用が急性心筋梗塞抑制作用を低下させることをエビデンスが指し示しているように感じられる。
コントロール | PPI(低暴露) | PPI(高曝露) | |
特定リスク因子を 持つ患者数 | 384 | 90 | 536 |
平均年齢 | 58歳 | 58歳 | 57歳 |
男性(%) | 66.9 | 64.4 | 68.1 |
心筋梗塞発症者 | 10 | 9 | 61 |
比率(%) | 2.6 | 10 | 11.38 |
95%信頼区間 | 1.01-4.19 | 3.81-16.19 | 8.69-14.07 |