2010年9月4日土曜日

2C19と代謝能力の関係の整理

clopidogrelの効果と2C19やABCB1の多型に関する自分の記述を読んでいて、ミスを見付けました。*2と*17をS型と呼ぶとか、ABCB1のT/T型にはprasugrelよりclopidogrelのほうが良さそうとか、正反対のことを書いてしまいました。読んで下さった方に謹んでお詫びいたします。記述は訂正しましたが、正解は*2と非*17がS型、T/T型にはclopidogrelよりprasugrelのほうが良さそう、でした。

2C19多型の話は機能低下変異である*2や*3と、アミノ酸配列の別の箇所の機能亢進型変異である*17があって複雑なのですが、頭にしっかり入っていなかったばかりに混乱してしまいました。復習を兼ねて整理しておきましょう。また、代謝能力との関連性の分類法は複数あることが分かったので、比較表を作ることにしました。出典はticagrelorという第4のADP受容体拮抗剤のPLATO試験のゲノムサブスタディです。被験者(ほとんどがカフカス大人種)のタイプ別の構成比も出ていたので併記します。

clopidogrelは体内で代謝を受けて活性化するプロドラッグです。様々な酵素が関与するのですが、近年の研究でCYP 2C19が特に重要であることが判りました。ところが、この2C19には機能喪失多型があり日本人など中国系は二組の遺伝子の片方又は両方が該当する人が過半を占めるようです。野生型は2C19*1と呼ばれ、機能喪失多型は*2、*3など数種類ありますが*2が一番多いようです。2C19には機能亢進多型もあり、*17と呼ばれています。この二つは異なった箇所の多型なので組み合わせが沢山ありそうに見えますが、実際には、*17があるのは*1だけです。そこで、話を短くするため、ここから先は単に17型(*1且つ*17)、1型(*1且つ非*17)、2型など(*2、*3、... *8)と呼びましょう。

遺伝子は二組あるので組み合わせは6種類になり、それぞれ、代謝能力との関連付けが行われていますが、GuebelとWallentinは少し異なった分類をしています。前置きが長くなりましたが、後は表をご覧ください。白人でもこれだけ代謝能力が違うことに驚かされます。このデータについては改めて書く積りです。

2C19多型と代謝能力
組み合わせGurbel分類Wallentin分類構成比
17型と17型EMURM5%
17型と1型EMRHM28%
17型と2型等NMP/RHM7%
1型と1型NMEM36%
1型と2型等PMIM17%
2型等と2型等PMPM2%



略語

  • EM:Extensive Metaboliser

  • URM:Ultra Rapid Metaboliser

  • RHM:Rapid heterozygote Metaboliser

  • P/RHM:Poor Rapid heterozygote Metaboliser

  • NM:Normal Metaboliser

  • IM:Intermediate Metaboliser

  • PM:Poor Metaboliser


外部リンク:

P. Guebel, JACC 2010年)

PLATOゲノムサブスタディ(ESCのウェブサイトの学会レポート)


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